ビタミンをプラントベースフードでしっかり摂取するには?摂取量やおすすめ食品を紹介

プラントベースの生活を送るうえで、どの食材を選べばビタミンをしっかりと摂れるのか心配な方もいることでしょう。プラントベースフードにはビタミンが含まれているイメージがありますが、バランスよくさまざまなビタミンを摂るためには、食材の選び方も重要です。

今回は、プラントベースフードに含まれるビタミンについて解説します。ビタミン摂取におすすめの食材と併せて、ビタミンの概要や種類についても触れるので参考にしてください。

 

プラントベースとは?

プラントベースとは、植物性食品を中心に食べものを選び、動物性食品の摂取をできる限り避けるという考え方のことです。植物性食品とは野菜や穀物など、動物性食品には肉や魚はもちろん、牛乳や卵なども含まれます。

プラントベースの食生活を選択することによって、宗教的な理念を実現したり、環境や健康に配慮したりといった考え方もあります。

 

ビタミンの基本

プラントベースの生活を送る際に気に掛けたい「ビタミン」とは、どういった役割をもつ栄養素なのか押さえておきましょう。ビタミンについて概要を解説します。

 

ビタミンの概要

ビタミンは、生きていくうえで必要な栄養素の一種です。たんぱく質、炭水化物、脂質、ミネラルと並んで五大栄養素に数えられています。ビタミンの特徴は「有機化合物」すなわち主成分が炭素であるということです。

ビタミンという名前はラテン語で生命を意味する「Vita」と有効成分「Amine」に由来しており、生命活動に対して有効に働く成分であることを示しています。生命活動には不可欠ですが、エネルギー源となる栄養素や、体を構成する栄養素ではないことも特徴です。

ビタミンは体内でつくることがほとんどできないため、食べ物から摂取する必要があります。また摂りすぎても弊害が出ることがあるため、さまざまな食材から適量を摂取しなければなりません。

 

ビタミンの働き

ビタミンの働きは、大きく分けて以下の2つです。

  • 体を正常な状態で維持する
  • エネルギーを作るサポートをする

それぞれについて解説します。

 

体を正常な状態で維持する

ビタミンは、人体を正常に維持するために必要な栄養素です。

ビタミンは全部で13種類あります。このうち、ビタミンB₁やビタミンB₆、ビタミンB₁₂などは、神経や筋肉の働きを調整する役割を担っています。一方、細胞を保護したり、再生したりするのは、葉酸、ビオチン、ビタミンD、ビタミンKなどです。

ビタミンのなかには、体の回復を助けて、疲労を回復するものもあります。いずれの場合も、ここに挙げたビタミンは一例に過ぎません。ビタミン同士で相互に作用しあい、効率よく体のさまざまな機能をになっていることがわかっています。

 

エネルギーを作るサポートをする

ビタミンには、栄養素からエネルギーを作るのをサポートする役割もあります。食材にはそれぞれ、さまざまな栄養素が含まれていますが、栄養素だけを摂ってもビタミンがなければエネルギーがつくられず、体が使うことはできません。

エネルギーの不足は疲労感につながります。つまりお腹いっぱいに食べていても、ビタミンが不足すると疲れを感じてしまう結果になるのです。

体内には、エネルギーをうみだすクエン酸回路という働きがあり、ビタミンはこの回路のなかで回路をしっかりと使うための潤滑油のような役割をしています。

 

ビタミンの種類

ビタミンは、水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの2種類に分けられます。水溶性ビタミンは9種類、脂溶性ビタミンは4種類、あわせて13種類のビタミンが存在しています。

ここでは、それぞれのビタミンについて解説します。

 

水溶性ビタミン

水溶性ビタミンは、水分に溶けやすい性質をもつビタミンです。水分に溶けやすい分、油脂分には溶けにくいという特徴があります。

体内で、水溶性ビタミンは血液などに溶け込んでいますが、使わなかった分は尿として排泄されてしまうため、こまめに食べ物から摂取しなければなりません。

水溶性ビタミンに数えられるのは、以下です。主な役割とともに確認してみましょう。

  • ビタミンB₁:疲労回復など
  • ビタミンB₂:細胞の再生、粘膜の維持など
  • ナイアシン(ビタミンB3):循環系、消化系、神経系の働きの維持など
  • ビタミンB₆:皮膚、粘膜、毛髪、歯などの生育
  • ビタミンB₁₂:アミノ酸や核酸、葉酸の代謝
  • 葉酸:DNAの核酸などを合成する
  • パントテン酸:代謝やエネルギーをつくるための酵素の働きを補助するなど
  • ビオチン:代謝、DNAの合成に関与
  • ビタミンC:酸化の抑制、ストレスへの抵抗力を強める作用、アセトアルデヒドの分解など

 

脂溶性ビタミン

脂溶性ビタミンは、水に溶けにくいビタミンです。その代わり、油脂分に溶けやすい性質があるため、脂質と一緒に摂取することで吸収しやすくなります。

水溶性ビタミンは水分に溶けて、余分なものが体外へ排出されやすいですが、脂溶性ビタミンは摂りすぎてしまうと体内の脂肪のなかで蓄積し、過剰症になることがあります。食事からの脂溶性ビタミンだけでは、ほとんど過剰症になることはありませんが、サプリメントの摂りすぎには注意してください。

 

脂溶性ビタミンに数えられるのは、以下4種類のビタミンです。主な役割とともに確認してみましょう。

  • ビタミンA:目、皮膚、粘膜の維持
  • ビタミンD:カルシウムの吸収促進、骨の強化
  • ビタミンE:抗酸化作用、赤血球の保護
  • ビタミンK:骨の形成・再石灰化、血液凝固

このうち、ビタミンAは「β-カロテン」あるいは「レチノール」「α‐カロテン」という形で食品に含まれていることが多々あります。また食品などの成分として「トコフェロール」と表示されていることがありますが、これはビタミンEの一種です。

 

プラントベースフードから充分なビタミンは摂取できる?

ビタミンの種類によってはレバーや卵などの動物性食品に多く含まれることがよく知られているため、プラントベースフードからの摂取で充分なのかどうか、不安に感じる方も多いことでしょう。しかし、プラントベースフードにも多くのビタミンが含まれています。どの食品にたくさんのビタミンが含まれているのか、具体的には次項で紹介します。

ビタミンを摂る方法には、食品のほかにサプリメントなどもありますが、必要以上にサプリメントを摂るとビタミンの過剰摂取になることもあるため注意しましょう。さまざまなプラントベースフードをバランスよく食べるのがおすすめです。

 

ビタミン摂取におすすめのプラントベースフード

 

ビタミンの摂取におすすめのプラントベースフードには、以下のようなものがあります。

 

ほうれん草

ほうれん草は、たくさんのビタミン類を含む食品です。ほうれん草に限らず、緑黄色野菜は総じてビタミンが多いため、食生活にぜひ活用してください。例えばほうれん草の場合、ビタミンC、ビオチン、パントテン酸、葉酸、ビタミンB₆、ビタミンKなどを摂取できます。

また緑黄色野菜に多く含まれるβカロテンは、体内でビタミンAになる栄養素です。緑黄色野菜の多くには、ビタミンEも含まれます。

ただし、ビタミンB₁₂やビタミンDなど、含まれない成分もあるため、他の食材と合わせてバランス良く摂ることをおすすめします。

 

にんじん

にんじんも緑黄色野菜の一種で、多くのビタミンが含まれます。にんじんに含まれるビタミンは、ほうれん草同様、体内でビタミンAをつくるためのβカロテンなどです。ビタミン以外にも鉄、カルシウムなども摂れるため、栄養が大変豊富な食材といえるでしょう。

しかしそんなにんじんにも、ビオチン、ビタミンB₁₂、ビタミンDなど、調理方法によっては含まれないことがあります。

 

干し椎茸、きくらげ

干し椎茸には、ビタミンC、ビオチン、パントテン酸、葉酸、ビタミンDなどが含まれています。

生椎茸の場合、ほぼ同じ栄養素が含まれてはいるものの、干し椎茸に比べて分量が少ないのが特徴です。例えば葉酸の場合、茹で調理をした干し椎茸には100gあたり35㎍が含まれていますが、同じく茹で調理をした生椎茸(菌床)には14㎍しか含まれません。

干すことで栄養が増えるのは、栄養が増加しているのではなく、干して体積が減少することによって少量のなかに栄養が凝縮されるためです。用途にもよりますが、わずかな量でたっぷり栄養を摂れるのは干し椎茸のメリットと考えて良いでしょう。

またビタミンDを摂るなら、きくらげをチェックしてください。茹で調理をした干し椎茸のビタミンD含有量は100グラムあたり1.4㎍ですが、同量の茹で調理をしたきくらげには8.8㎍が含まれます。

 

大豆

大豆には、ビオチン、葉酸、ビタミンEなどが含まれています。

大豆にはさまざまな食べ方があり、もちろん納豆でも栄養豊富なことに変わりはありません。納豆の場合、ゆで大豆に比べて増加する栄養素もあります。

例えばビタミンB₂は、ゆで大豆には100グラムあたり0.08㎎含まれていますが、納豆に含まれる量は0.30㎎です。成人のビタミンB₂の1日の摂取推奨量は1.3~1.6㎎なので、納豆は効率的にビタミンB₂を摂取することができます。

ビタミンKはもっと差が大きく、ゆで大豆では100グラムあたり7㎍が含まれますが、同量の納豆には870㎍が含まれています。

ただしビタミンEなど、ゆで大豆にも豊富な栄養が含まれているため、どちらの食品も摂取する機会を持ちたいものです。

 

海藻類

海藻類とは、のりやわかめ、あおさなどのことです。いずれにも、さまざまなビタミン類が含まれています。野菜には含まれにくいビタミンB₁₂も、海藻類なら摂取できるので、野菜とあわせてぜひ食卓に取り入れてください。

100gあたりのビタミン類の含有量がとりわけ多いのが、焼きのりです。焼きのりは手軽に食べることができるのでおすすめの食材です。

ただし、いずれも一度にたくさん食べる食材ではないため、普段の食卓に一品追加するなどしてこまめに摂取すると良いでしょう。

 

プラントベースフードではさまざまなビタミンが摂取できる!

ビタミンは、体を維持するために必要不可欠な栄養素です。ビタミンは相互に作用しあいながら体内でさまざまなはたらきを担っているため、1種類でも不足してしまうと不調の原因になることがあります。

また食材によって含まれるビタミンが異なるため、おすすめの食材をバランスよく組み合わせて摂取することが大切です。

プラントベースフードのなかには、ビタミンを豊富に含むさまざまな食材があります。野菜、きのこ、豆類、海藻類とバリエーションが豊かで、毎日の食卓に取り入れれば栄養面でも、味や見た目の面でも、充実した食生活が送れるでしょう。多種多様なプラントベースフードからビタミンを摂り、健康的に過ごしましょう。

 

 

参考文献

厚生労働省e-ヘルスネット 厚生労働省 参照年月日:2023年12月19日 ビタミン | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
 
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 文部科学省