プラントベース生活で脂質は不足しない?知っておきたい脂質の基本
脂質は肥満の原因にもなりますが、カラダにとってなくてはならない栄養素の1つです。摂取しすぎると必要以上に体内に蓄積されてしまうため、健康的な体型を保つためにも適量を食事から摂取する必要があります。
植物由来の原材料で作られたプラントベース食品には、不飽和脂肪酸が豊富です。この記事では、基本的な脂質の役割や種類に加え、プラントベース生活で脂質を摂取する際のポイントをご紹介します。
脂質の概要と役割
脂質とは、生体成分のうち、水に溶けず有機溶媒に溶ける物質のことです。脂質は、グリセロールと脂肪酸によって構成されています。脂質をとりすぎてしまうと肥満の原因になりますが、本来は炭水化物やたんぱく質と同じくカラダにとって重要な栄養素の1つです。
また、脂質はエネルギー源になるだけでなく、複数の役割があります。
ここでは、脂質の役割についてそれぞれ具体的に解説します。
エネルギー源になる
脂質は体のエネルギー源として活用されます。脂質が余れば中性脂肪として体内に溜め込まれ、エネルギー源が必要になったときに分解して使われます。中性脂肪とは、いわゆる体脂肪のことです。脂質をとりすぎると肥満になるのは、もともと脂質が体内に蓄積される仕組みになっているからです。
細胞膜を構成する
カラダは細胞でできており、細胞膜は脂質で構成されています。体内の多くを水分が占めているため、細胞膜は常に水分とともに存在しています。よって、細胞膜を構成しているのは、脂質の中でも親水性と疎水性の両方を併せ持つ複合脂質のリン脂質です。複合脂質の特徴については後述します。
生理活性物質として働く
脂質は生理活性物質としても働きます。生理活性物質は、状況に応じて体内の状態を整える働きをします。脂質に由来する生理活性物質としては、女性ホルモンや男性ホルモンといった性ホルモンが代表的です。性ホルモンのもとになるのは、脂質に含まれているコレステロールです。
脂溶性ビタミンの吸収率を向上させる
脂質は単体でカラダに影響を与えるだけでなく、他の栄養素と一緒に摂取するとさらに別の働きをする場合があります。脂溶性ビタミンは脂質と一緒に摂取すると、吸収率が高まることで知られています。脂溶性ビタミンは、具体的にはビタミンA、D、E、Kなどです。たとえば、ビタミンA、D、E、Kを多く含む食材を油で炒めて調理すると、吸収が促進されます。
脂質の種類
脂質は、さらに単純脂質、複合脂質、誘導脂質の3種類に分かれています。それぞれどのような特徴があるのでしょうか?ここでは、単純脂質、複合脂質、誘導脂質について詳しく説明します。
単純脂質
単純脂質は、脂質の基本的な構造です。グリセロールと脂肪酸の結合により成り立っています。単純脂質は、主にカラダの重要なエネルギー源として利用されます。つまり、中性脂肪としてカラダに蓄えられている脂質は単純脂質です。ただし、体内に蓄えられている中性脂肪には水分も含まれています。なお、単純脂質は血中にも存在します。
また、単純脂質は、食材にも含まれています。たとえば、サラダ油やオリーブオイルなどの食用油も主成分は単純脂質です。
複合脂質
複合脂質は、単純脂質のグリセロールと脂肪酸の構造に加えて、一部に糖やリン酸が結合している脂質です。糖が結合している場合は糖脂質、リン酸が結合している場合はリン脂質とよばれます。
複合脂質の特徴は、糖質やリン酸が結合することで親水性に優れている点です。基本的に脂質は水に溶けませんが、糖質やリン酸の結合により水に溶けやすくなります。すでに触れたとおり細胞膜は脂質で構成されており、その脂質の種類は複合脂質です。
誘導脂質
誘導脂質は、単純脂質や複合脂質が分解されると生じる脂質です。単純脂質や複合脂質は構造が大きく、体内で活用するには分解しなければなりません。分解により誘導脂質になると、体内にさまざまな作用をもたらすことができるようになります。
たとえば、脂肪酸、コレステロール、ステロイドなどは、誘導脂質です。それらの誘導脂質は、エネルギー源や生理活性物質(ホルモン)などとして体内で幅広く活用されます。誘導脂質は体内のさまざまな調整をするために必要不可欠な存在です。
動物性の脂質と植物性の脂質の違い
脂質は、動物性のものと植物性のものがあります。それぞれにはどのような違いがあるのでしょうか?ここでは、動物性の脂質と植物性の脂質の違いについて解説します。
動物性の脂質の特徴
動物性の脂質とは、肉やバター・チーズなどの脂質に含まれています。一般的に、魚の脂質は動物性の脂質には分類されていません。
すべてではないものの、動物性の脂質は飽和脂肪酸を含む場合が多いです。飽和脂肪酸は、血液中の中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)などを増やす作用があるといわれています。そのため、過度に摂取しないよう気をつける必要があります。
植物性の脂質の特徴
植物性の脂質は、植物から抽出される脂質を表しています。たとえば、ごま油やオリーブオイルなどの植物油に含まれています。また、ナッツ類や大豆加工食品なども植物性の脂質が含まれています。
植物性の脂質には不飽和脂肪酸が多く含まれています。不飽和脂肪酸は、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減らす作用があります。ただし、不飽和脂肪酸は熱や光、空気などにより酸化しやすいため、保存や調理の際は配慮が必要になります。
プラントベース生活で植物性の脂質を摂取するうえで押さえておきたいこと
プラントベース食品を食生活の中心にすれば、自ずと植物性の脂質を多く摂取することにつながります。植物性脂質の特徴でお伝えした通り、植物性の脂質には不飽和脂肪酸が豊富です。
ただし、植物性の脂質であっても、飽和脂肪酸を多く含む場合もあります。含まれている不飽和脂肪酸や飽和脂肪酸の量も考慮しつつ、植物性の脂質を積極的に摂取してみてはいかがでしょうか?
また、不飽和脂肪酸を多く含む植物性の脂質であっても、摂取しすぎると肥満の問題につながります。基本的に脂質は摂りすぎないようにする必要があるため、どの程度の量を摂取したかを把握するようにしましょう。
良質な脂質を含むプラントベース食品
植物油
不飽和脂肪酸を多く含む植物油としては、オリーブオイル、グレープシードオイル、アマニ油、エゴマ油、こめ油などがあげられます。不飽和脂肪酸は酸化しやすい性質があるため、生で使用するのがおすすめです。たとえば、植物油でドレッシングを作り、サラダにかけて食べるとよいでしょう。
なお、マーガリンも植物由来の油ですが、トランス脂肪酸を多く含みます。トランス脂肪酸はLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やして動脈硬化を促進させる物質です。ただし、従来と比較するとトランス脂肪酸の量は低減されており、気にしすぎる必要はないでしょう。
ナッツ
ナッツは、不飽和脂肪酸を豊富に含む食材です。たとえば、マカダミアナッツ、クルミ、松の実、ピスタチオなどを食生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?
ただし、ナッツはつい食べすぎてしまう人も多いため、量に気をつける必要があります。個包装で小分けにされているタイプを選ぶと、食べ過ぎの防止になります。
なお、店頭でナッツを選ぶ際は、素焼きのものがおすすめです。素焼きのものを選ぶことで余計な塩分やカロリーを摂取しないように配慮しましょう。
大豆加工食品
大豆も脂質を多く含んでいるプラントベース食品の1つです。大豆そのものだけでなく、さまざまな大豆加工食品が販売されているため、さまざまな美味しさを味わえます。たとえば、油揚げ、豆腐、高野豆腐、きなこなど、たくさんの大豆加工食品が存在します。
大豆加工食品なら、脂質だけでなく植物由来のたんぱく質も摂取可能です。たんぱく質も体にとって重要な栄養素であるため、大豆加工食品で脂質とたんぱく質の両方をとり入れましょう。
プラントベースで適度に脂質を摂取しよう
脂質は体内でさまざまな作用をもたらす重要な栄養素です。カラダにとって必要不可欠であるため、適量を食事から摂取する必要があります。しかし、脂質をとりすぎると必要以上に体内に蓄積されて肥満の原因にもなります。脂質は適量を摂取できるよう、摂取量を把握しながら食事をとることが大切です。
植物性の脂質には不飽和脂肪酸が多く含まれています。プラントベース食品を上手に活用し、良質な脂質を摂取しましょう。BEYOND FREEでは、プラントベース食品を多く取り揃えていますので、ぜひチェックしてみてください。
参考文献
e-ヘルスネット 厚生労働省 参照年月日:2024年2月20日 脂肪 / 脂質|e-ヘルスネット(厚生労働省)