雑穀とは何ですか?種類や栄養、使い方など

雑穀は、栄養価や機能性の高さから昨今注目を集めている食べ物の一つです。しかし興味はあるものの、そもそも雑穀とは何か、食べるとどのようなメリットがあるのかを知らない方も多いのではないでしょうか。

この記事では雑穀の定義や種類、健康への影響について紹介します。普段の食事に雑穀を取り入れて健康生活を始めたい方はぜひ参考にしてください。

 

雑穀とは何か?簡単に解説

様々な雑穀”

雑穀とは英語で「millet」と名づけられたイネ科作物の総称です。具体的には、きびやあわ、ひえ、とうじんびえなどが挙げられます。日本においては上記に加え、精白米とパンコムギ以外のマイナーな穀物(はとむぎ、おおむぎ、そば、アマランサス、キヌア、大豆など)も雑穀と位置付けられています。

雑穀は、紀元前5千年頃から中央アジアやアフリカで栽培が始まりました。日本では、少なくとも紀元前2000年以前から栽培されていたという考古学的証拠が見つかっており、イネより長い歴史を持っています。

雑穀は三大穀物(コムギ、イネ、トウモロコシ)が栽培できない環境でも栽培できるものが多く、また栄養価や機能性の高さから昨今注目が集まっています。

 

雑穀の主な種類と各々の特徴

雑穀”

先程紹介したように、一口に雑穀と言っても様々な種類があります。ここでは厳密な定義に該当する雑穀とそれ以外の雑穀について、種類や特徴を紹介します。

 

狭義の主な雑穀

厳密に定義付けられている本来の雑穀には、きびやあわ、ひえなどがあります。

 

きび(英語でProso millet)

きびは、中央アジアの温帯地域が原産のイネ科キビ属の一年草です。秋になると黄色い実がなることから「黄実(きみ)」→「きび」と呼ばれるようになったと考えられています。高温多湿かつ排水良好地を好む特徴がありますが、酸性土や寒冷地でも栽培可能です。

日本では明治30年代(3.5万ha)を最高に生産地が減少しています。現在の主な栽培地は全国の生産量の約半分を占める沖縄県と岩手県、長崎県の3県です。きびの実はコクや甘味に優れモチモチとした粘りがあり、主食として食べる他、団子や菓子、あめなどにも利用されています。

 

あわ(英語でfoxtail millet)

あわは、西南アジアを原産とするイネ科エノコログサ属の作物です。温暖・乾燥地を好みますが北から南まで生態型が分化しており、多くの品種が幅広い地域で栽培されています。日本では縄文時代から栽培されており、ひえと共に最も古い雑穀と言われています。主な生産地は岐阜県や熊本県、鹿児島県などです。

あわの実は主食や団子、菓子などの食用の他、小鳥の餌としても利用されています。モチモチした食感で甘味があり、料理の汎用性が高い雑穀です。

 

ひえ(英語でjapanese barnyard millet)

ひえは、東アジアを原産とするイネ科ヒエ属の作物です。耐寒性が強く水はけの悪い不良環境でも栽培でき、長期保存に優れています。クセがなくさっぱりとした味わいが特徴で、食用の他、小鳥の餌や飼料として利用されています。

日本には縄文時代に渡来し、あわと共に長きに渡って主食として親しまれてきました。冷害に強い理由から全国の山間地を中心に昭和20年頃までは3万ha程度の栽培面積を誇っていましたが、その後は減少しています。

 

それ以外の主な雑穀

日本では狭義の雑穀に加え、精白米やコムギ以外のマイナー穀物も雑穀として位置付けられています。

 

狭義の雑穀以外のイネ科作物

厳密な定義には該当しないイネ科植物の中でも、はとむぎやおおむぎ、古代米、えんばく、などは雑穀とされています。

  • はとむぎ:はとむぎ茶や焼酎の原料などに使われる東南アジアの原産の作物。主な生産地はタイや中国であるが、品質上の理由により輸入品から国産品へとシフトしている。

  • おおむぎ:麦ご飯や味噌、焼酎、麦茶など幅広く利用されている雑穀。需要拡大が期待される理由から、健康機能性成分を多く含む品種や飼料用品種、選抜・加工利用技術の開発が進められている。

  • 古代米:昔のイネのような特徴を持つイネの品種の総称。日本では赤米や黒米が古代米とされている。赤米のタンニンや黒米のアントシアニンなど抗酸化作用のあるポリフェノールを含んでいるのが特徴。

  • えんばく:健康に役立つ食材として人気を集めるオートミールの原料。飼料としても利用されている。

オートミールの特徴や栄養素については下記記事で詳しく紹介しているので、気になる方はぜひ参考にしてください。
オートミールとは何か?カロリーや糖質など白米との違いを簡単に解説

 

ヒユ科作物

ヒユ科作物のアマランサス、キヌアなども雑穀と呼ばれる作物の一部です。

アマランサスは、メキシコ・グアテマラ原産の一年草で、日本では東北地方を中心に栽培されています。たんぱく質とミネラルを多く含んでいるのが特徴です。ご飯と一緒に炊いたりポップ菓子にしたり、実を粉にしてパンとして食べたりできます。

キヌアは、アンデス高地で数千年に渡って栽培されてきた、耐塩性や耐干性に優れている穀物です。食物繊維やミネラルを多く含む特徴があります。具体的なキヌアの特徴や栄養素については、下記記事で詳しく紹介しています。
キヌアとは何かを簡単に解説!白米や玄米との違いや含有栄養素の効果とは

またアマランサスとキヌアは、両者とも高い栄養価を持つため、スーパーフードと呼ばれています。スーパーフードの詳細を知りたい方は下記記事を読んでみてください。
スーパーフードを一覧で紹介!栄養価や特徴など

 

マメ科作物

私たちにとってなじみの深い大豆や小豆などのマメ科作物も、雑穀の一種です。

大豆は、約5千年以上前から存在する中国東北部原産の作物。国内消費量のうち約82%が油として利用されており、その多くが輸入品です。国産の大豆は豆腐や納豆、味噌などとして利用されています。大豆には約40%のたんぱく質と約20%の脂肪が含まれており、重要な油料・たんぱく資源として世界中で重宝されています。

大豆のたんぱく質について詳しく知りたい方は下記記事を読んでみてください。
大豆のたんぱく質ってすごい?含有量や種類、大豆食品や野菜などとの比較

小豆は、大豆と同じく中国原産で約2千年前に日本に渡来した作物です。日本では栽培面積の6割以上を北海道が占めています。国内消費量のうち約80%が製あん用であり、その他にぜんざいや甘納豆、赤飯として利用されています。

 

雑穀に含まれる栄養素

身体によいイメージ”

多くの雑穀は精白米と比較してマグネシウム、鉄、亜鉛、食物繊維を特に多く含んでいます。具体的な栄養素や数値について、下記の表を見てみましょう。


マグネシウム(mg)

 鉄(mg)

亜鉛(mg)

食物繊維(g)

精白米/うるち米

23 0.8 1.4 0.5

きび/精白粒

84 2.1 2.7 1.6

あわ/精白粒

110 4.8 2.5 3.3

ひえ/精白粒

58 1.6 2.2 4.3

おおむぎ/乾

40 1.1 1.1 7.9

キヌア/玄穀

180 4.3 2.8 6.2

黄大豆/乾

220 6.8 3.1 17.9

※すべて100gあたりの量
※出典:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

各栄養素の主な働きは以下の通りです。

  • マグネシウム:人体に必要なミネラルの一種であり主に骨や歯に存在する他、筋肉や脳・神経に存在する。300種類以上の酵素を活性化し、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温の調整などの機能を担う。

  • 鉄:赤血球のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンの他、肝臓や骨髄、筋肉などに存在する。鉄不足により貧血を引き起こしてしまう。

  • 亜鉛:骨格筋、骨、皮膚、肝臓、脳などに存在し、代謝調整作用を持つ。不足すると皮膚炎や味覚障害などにつながる可能性がある。

  • 食物繊維:ヒトの消化酵素で消化できない物質の総称で、水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維に分けられる。便通を整えるなどの働きがある。

食物繊維の特徴や働きについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。
食物繊維の水溶性と不溶性の違いとは?食品に含まれる割合の一覧も


雑穀の食べ方

雑穀米”

雑穀は白米と一緒に炊く他、パンやうどん、天ぷらの衣など小麦粉と置き換えて食べることができます。白米と一緒に炊く場合は10%程度を雑穀で置き換えるのがおすすめ。30分~1時間程度水に浸し、多めの水を加えて通常の炊飯器で炊きます。

またサラダやスープのトッピングとして、約3倍の水で10~15分間茹でた雑穀を加えるのもおすすめです。

 

雑穀をおいしく取り入れて、健康生活を始めよう!

雑穀を活かした食事のイメージ”

雑穀とは、一部のイネ科作物や主食以外として利用している穀物を指す植物性食品です。マグネシウムや食物繊維などの体に嬉しい栄養素が多く含まれており、不良環境でも栽培しやすいことから、世界中で注目を集めています。

雑穀は白米と一緒に炊いたり小麦粉と置き換えたりと様々な方法でおいしく食べることができます。今よりさらに健康になるために、普段の食事に雑穀を取り入れてみませんか?


参考文献

日本農民新聞 2023年4月5日号 日本農民新聞社 参照年月日:2024年12月4日
https://agripress.co.jp/archives/16387

作物研究部門 農研機構 参照年月日:2024年12月4日
https://www.naro.go.jp/index.html

農林水産省 参照年月日:2024年12月4日
https://www.maff.go.jp/index.html

公益社団法人 国際農林業協働協会 参照年月日:2024年12月4日 https://www.jaicaf.or.jp/fileadmin/user_upload/publications/FY2013/kyouryoku3602.pdf

e-ヘルスネット 厚生労働省 参照年月日:2024年12月4日
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/ 

雑穀の定義 一般社団法人日本雑穀協会 参照年月日:2024年12月4日 https://www.zakkoku.jp/milletdefinition