菜食主義でも外食はできる!北欧在住ライターの店選びのコツ。

菜食を積極的に取り入れているフィンランド在住のライターが、実際の食生活やその魅力を紹介します。フィンランドをはじめとする北欧やヨーロッパの菜食に関する情報も織り交ぜながら、連載でコラムをお届けします。

 

今回は、菜食生活を実践するうえで壁となりやすい外食の問題をピックアップします。

 

「外食に困る」は、菜食 あるある の1つ。

こんにちは!フィンランド在住のライター、タカコです。北欧の一国、フィンランドへの海外移住をきっかけに菜食中心の食生活を始めて5年以上が経ちます。

近年さまざまな価値観の多様化が進むなか、菜食主義・ヴィーガンのライフスタイルや食生活への理解・関心も高まっているようです。

私自身、特にこの数年でスーパーにもプラントベースの食品が増えたことを実感しており、食材の選択肢が広がったり、調理がラクになったりととても助かっています。

 

とはいえ、まだまだ不便さを感じているのが、外食です。正直にいうと、日本でもフィンランドでもヴィーガン対応の飲食店やメニューが十分とは言えず、もう少し増えてくれたらなぁ・・・というのが本音。

特に困るのは、知らない地域、初めての土地へ旅行する時。飲食店選びのハードルが高いこと!

ヴィーガン対応のメニューがあるかないかは、一見してわからないことも多いため、気になったところにふらっと入って注文するということがなかなかできません。菜食につきまとうあるあるな悩み、それが外食だと思います。

 

また、菜食を実践していることを人に伝えると「外ではどうしてるの?」「外食が大変でしょう?」とたずねられることもしばしば。

そこで今回は、私自身の菜食生活・体験をもとにした菜食主義の外食事情やお店選びのコツなどをシェアしていきたいと思います。

 

フィンランドでは・・・

 

まずフィンランドの首都、ヘルシンキですが、中心地であれば何件も、あるいは、ある程度まとまった数のヴィーガン向けの飲食店があります。

それが多いのか少ないのかは人口などにもよるので、判断が難しく一概には言えませんが、あくまでも私個人の体感を率直に言うと、残念ながら、どこを歩いてもどこを見てもヴィーガン向けのレストランが次々に目に入ってくる、という状態ではありません。

しかし、事前に情報を調べていれば十分に選択肢はあります。

 

また、フィンランドのいくつかの都市を訪れた印象から、(フィンランド国内基準での)主要都市であれば、ヴィーガン向けの飲食店が1件もないということはなさそうです。

値段はもちろん都市、レストラン、メニュー次第ですが、1人前ランチでおおよそ10~20ユーロ(1ユーロ:150円としたら日本円で1,500~3,000円くらい)といったところでしょうか。

 

首都にしてもその他の都市にしても、いずれにしても事前情報なしで街を散策してヴィーガン向けの飲食店を探す場合はちょっと苦労することもあります。

ベジ〇〇、ナチュラル〇〇など、それっぽい名前がついていても、ヴィーガン対応ではなく、卵もしくは乳製品を使用したベジタリアン対応のメニューのみを提供しているというケースもあるので、徹底した菜食主義を実践している場合は要注意です。

 

また、おなかがとても減っていたり、時間がなかったりして急ぐ時は、フィンランドではプラントベースの加工食品であれば比較的容易に手に入るため、スーパーを見つけてヴィーガン向けの食品を探す方が効率がいいかもしれません。

菜食主義の基準に適う商品には、「Vegaaninen(フィンランド語でヴィーガンという意味)」などと表示されていることが多いので見つけやすいかと思います。

 

食事ではなく、お茶を楽しむ場合のハードルはだいぶ下がります。カフェであれば豆乳やオーツミルクを用意しているところも少なくないからです。

ヴィーガン対応のスイーツを置いているところもありますが、通常メニューと比べると提供される数が限られているため早い時間に売り切れがちです。

 

頼みの綱はアジア系レストラン。

実は私自身は、招待された食事会、友人との会食など、一年で数えられるほどは動物性食品も摂るセミべジタリアンです。そのため、いざという時はヴィーガン対応メニューがなくても大丈夫。

 

しかし、完全菜食主義の夫との外食では妥協ができません。インターネットなどで事前に地域の情報を調べずに出かけてしまい、出先で空腹になった時は「ヤバい!」と焦ることに(笑)。

現地でスマホで検索しても、たくさんの情報を拾うのに疲れたり、情報が最新ではなく実際は店が閉まっていたり・・・。

 

結局は街を散策しながら探すことになり、店に入って店員さんに「ヴィーガン対応メニューはありますか?」とたずねては「ごめんなさい」と言われ、すごすごと店を出たことも何度もありました。

 

ただ現在は闇雲に一軒一軒たずねるということはしません。過去の苦い経験から、いつの間にか自然に3つの系統に目星をつけて探すようになりました。

あくまで個人の体感ですが、フィンランドでヴィーガン対応メニューがある可能性が高いのは、①日本料理を含むアジア料理系 ②中東料理系 ③北欧料理系、の3系統の飲食店だと思います。

(実はファーストフード店やピザショップにもヴィーガン対応メニューはあるのですが、私にとってはこれは外食というよりテイクアウトで食べたいものなのであえて選択肢から外しています。3系統の飲食店を探してもお店が見つからない時の最後の手段です。)

 

ここからは、3系統のレストランの特徴を紹介します。

 

①日本料理を含むアジア料理系

寿司レストランやラーメン店など、日本料理を扱う飲食店にいちかばちか入ってみたら、意外にもヴィーガン対応メニューがあってほっとした、という経験が何度もあります。

 

もちろん寿司といえばメインは海鮮、菜食とは縁が無さそうですが、ヴィーガン向けにかっぱ巻き・アボガド巻き・いなり寿司などが提供されている場合があります。

そしてラーメンは通常であれば動物性のだしが欠かせませんが、最近は動物性原材料を使用していないラーメンが提供されていることもあるのです。

ちなみに寿司レストランでは、お寿司につける醤油やすし酢などに魚介系のエキスなどが使用されている可能性もあるため、メニュー表に明確なヴィーガン表示がない時は念のためたずねるようにしています。

 

その他、タイ・ベトナム・インド料理などアジア料理の店もヴィーガン対応の店が多いように感じます。

いずれもプラントベースのカレーがあることが多く、中には菜食主義者をメインの対象にして、ほぼ全てのメニューがヴィーガン対応の店もあります。

 

このように、アジア料理系の飲食店は私にとっての頼みの綱です!

経験的にヴィーガン対応メニューがある場合が多いことを実感している上に、私にとっては味に馴染みがあり口に合うので、今後もこういう店が続き、増えていくことを願っています。

 

②中東料理系

ファラフェル(ひよこ豆やそら豆を使ったボール状の揚げ物)、フムス(ひよこ豆のディップ)などは、ヴィーガンにはおなじみになりつつあるプラントベースの中東料理。

ファラフェルはもともと中東のストリートフードだったそうですが、欧州の広い範囲で食べられ、スーパーでも売られるなど日常に普及しています。

日本でいうとコロッケのような存在でしょうか、おかずとスナックの中間のような手軽さが人気の秘密かもしれません。

 

ファラフェルやフムスを初めて食べた時は、同じ豆料理でも日本とはずいぶん調理の仕方が異なるなぁと感心しました。

ファラフェルは豆を潰して成形し油で揚げるもの。家で作るには少し手間がかかりそうなので、私は外食や加工食品で楽しむことにしています。

 

フィンランドの街ではこのような中東料理を提供するレストランやキッチンカ―をしばしば見かけます。

中東の一国、イスラエルはべジタリアン大国もしくはヴィーガン大国とも言われているので、中東料理に出会う機会がますます増えていくかもしれません。

 

③北欧料理系

決して数は多くありませんが、北欧スタイルの料理を提供していてヴィーガン対応のレストランに出会うことがあります。

私も数か所だけ行ったことがありますが、いずれもランチタイムで、ビュッフェ形式を採用していました。野菜をたっぷり使ったさまざまな副菜、主菜がずらりと並び、とても健康的な印象で、菜食を実践している私にはとてもありがたいものでした。

 

通常のホテルやレストランのビュッフェではヴィーガンには選択肢が少なく、たいていはサラダかフルーツ、そしてお米やオーツ麦のプレーンな粥などをいただきます。

ちょっと寂しい想いをするので、ビュッフェでたくさんの菜食が並んでいるととても嬉しいものです。

 

日本は…意外と進んでいるかも!?

現在のところ、日本のヴィーガン人口比率は、諸外国と比べても特に高いものではありません。でもその割には外食の選択肢が広がってきているように感じます。

そもそも都市の規模が大きく、人口が密集していることが背景にあるのだと思いますが、東京都内であればまとまった数のヴィーガン向け飲食店がありますし、その他の主要都市でもスマホで調べればある程度の件数の情報が上がってくるため、帰国・旅行の際に助かっています。

 

たとえば京都市も私にとってありがたい都市のひとつ。もともと精進料理の文化があり、外国からの観光客も多いせいか、ヴィーガン対応の食事処が多く過ごしやすい印象があります。

また、東京オリンピック前に帰国した際、とある全国展開の大手チェーンレストランに動物性原材料不使用のメニューが新しく加わっており、とても驚きました。日本に来ると食べる物に困りがちなフィンランド人の夫も大喜び。

 

ただ、都市圏を離れると選択肢がなくて困ることも。今後もう少しヴィーガン対応の飲食店やメニューが増えたらいいなと期待しています。

 

事前の情報収集が大切。

今回は菜食生活の外食事情をシェアさせていただきました。確かに菜食主義を厳密に実践する場合は、飲食店にふらっと入ってこだわりなく注文する・・・という、ありふれた行為が難しくなります。

また、飲食店選び、メニュー選びの選択肢も限られています。でもそれは、アレルギーを持っている場合や健康上の事情がある場合も同じこと。

 

肝心なことは、やはりできる限り、事前にメニューの中身や価格、レビューなどの情報をチェックしておくことかもしれません。

事前に情報を調べたかどうかで得られる体験が違ってきますし、どこで何を食べたいか、はっきりさせてから出かける方が余裕を持って行動できます。

 

うれしいことに、少しずつヴィーガン向けの飲食店やヴィーガン対応メニューを提供する飲食店は増えています。プラントベースの価値観、メリットや魅力に対する理解が広がるに伴い、外食産業の世界も変わりつつあるのではないでしょうか。

 

それではまた!今後もフィンランドから菜食やプラントベースに関連する暮らしの情報を報告・シェアできればと思います。

 

Text/Takako.H

ライタープロフィール

フィンランド在住。移住とともに菜食生活を開始し5年ほどになります。自然が身近で、サステナブルな社会の実現への関心が強い北欧の人々や文化に触れながら生き方を学んでいます。私たちのライフスタイルの可能性や選択肢が広がるきっかけとなるような菜食の情報を発信していければと思います。