こんにゃくに栄養はないの?こんにゃくに含まれる栄養素の機能や効果的な食べ方

こんにゃくといえば、ダイエットによく活用される食材です。日本人にはなじみが深い一方で「栄養がない」というイメージもあるかもしれませんが、果たして本当なのでしょうか?この記事ではこんにゃくの栄養素とその働きなどについて説明します。

 

こんにゃくには栄養がないのか?

“こんにゃく”

まず、こんにゃくの成分についてみていきましょう。文部科学省の日本食品標準成分表※によると、板こんにゃく(精粉)の約97%が水で構成されています。しかし残りの3%には栄養素が含まれており、約2%が食物繊維、残り約1%はカリウムやカルシウムなどのミネラルです。

※出典:精粉こんにゃく 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

 

こんにゃくのカロリー・栄養素とその働き

“こんにゃく”

次に、100gあたりのこんにゃくに含まれるエネルギー(以下カロリー)や栄養素の量をみていきましょう。

  • エネルギー 5kcal
  • 炭水化物(糖質、食物繊維) 2.3g(0.1g、2.2g)
  • 脂質 微量
  • たんぱく質 0.1g
  • カリウム 33mg
  • カルシウム 43mg

※出典:精粉こんにゃく 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

こんにゃくは100gあたりのカロリーが約5kcal、糖質は約0.1gと極めて低カロリー・低糖質です。ほとんどが水分なのでダイエット中でも調理して楽しめるでしょう。

次にカロリー源以外の3つの栄養素について詳しくみていきましょう。

 

カリウム

カリウムは、ナトリウムと拮抗して体内の電解質を調整するミネラルの一つです。腎臓を通じて細胞内外の水分量を調整する他、筋肉の収縮や神経伝達などにも関わります。

カリウム摂取の目標量は2020年版「日本人の食事摂取基準」によると男性が3,000mg以上、女性が2,600mg以上です。摂り過ぎても調整作用が働くため過剰になることはまれと言われている一方で、カリウム不足に陥ると食欲不振や脱力感、不整脈などの症状が見られるケースもあります。

 

カルシウム

カルシウムは歯や骨をつくるのに不可欠です。成人1人1日当たりのカルシウム推奨量は、男性が700mg~800mg、女性は650mgとされています。不足すると骨密度が低くなり、骨粗鬆症や骨折の原因になるので摂取が必要です。さらにカルシウムの吸収を促すため、ビタミンDも一緒に摂るようにしましょう。

 

食物繊維

食物繊維は植物の細胞壁などに多く含まれる成分で、大きくヒトの消化酵素で消化されない不溶性食物繊維と水に溶けて粘着性を持つ水溶性食物繊維に分けられます。

こんにゃくの食物繊維は主にグルコマンナンと呼ばれる不溶性食物繊維です。食物繊維は整腸作用の他にも余分な糖や脂質も体外に排出する作用があるため、生活習慣病の予防にもつながるでしょう。

 

こんにゃくには種類がある

“こんにゃく”

こんにゃくはいくつかの種類に分けられます。それぞれの特徴を紹介しましょう。

精粉こんにゃくは、こんにゃく芋の精粉(でんぷん)を使って作られる最も一般的なこんにゃくです。こんにゃく芋を乾燥させて粉にしたもので、板こんにゃく、玉こんにゃく、突きこんにゃく、粒こんにゃく、さしみこんにゃく、糸こんにゃく(しらたき)など様々な形に加工されます。

生いもこんにゃくは、こんにゃく芋をすりつぶして、そのまま固めたものです。精粉こんにゃくに比べて黒っぽく歯ごたえがあります。また三二酸化鉄と呼ばれる鉄で赤く染めた「赤こんにゃく」というのもあり、滋賀県の特産品として知られています。

ここからは、こんにゃくの中でも板こんにゃく(精粉)、板こんにゃく(生いも)、しらたき、赤こんにゃくの4種類をピックアップして解説していきます。

 

こんにゃくの種類別カロリーと栄養素

“こんにゃく”

こんにゃくの種類別にカロリーや糖質の量を見ていきましょう。

 

エネルギー(kcal)

糖質(g)

脂質(g)

たんぱく質(g)

板こんにゃく(精粉)

5 0.1 微量 0.1

板こんにゃく(生いも)

8 0.3 0.1 0.1

しらたき

7 0.1 微量 0.2

赤こんにゃく

6 0.2 微量 0.1

※すべて100gあたりの量
※出典: 精粉こんにゃく・生いもこんにゃく・しらたき・赤こんにゃく 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

こんにゃくは種類によって多少の栄養素の違いはありますが、すべての種類でカロリーが低く糖質も少ないことが分かります。一番カロリーが高い、生いもこんにゃくでも8kcalです。

こんにゃくは調理方法やメニューによって使い分けられます。例えば煮物や炒め物、おでんには板こんにゃく(精粉・生いも)、サラダにはさしみこんにゃく、すき焼きや麺代わりにはしらたきなどです。

ちなみに赤こんにゃくは特産となる滋賀県で冠婚葬祭に「赤こんにゃく煮」としてもてなされています。

 

こんにゃくに含まれる栄養素の健康機能

“こんにゃく”

ここからは、こんにゃくの含有する栄養素による働きを詳しくご紹介します。

 

ダイエットをサポートしてくれる

こんにゃくは、なんといってもカロリーの低さが魅力。ダイエットの味方として古くから親しまれてきました。

摂取カロリー(食事)よりも消費カロリー(代謝・運動)が多くなると減量が可能です。しかし食事の量を極端に減らすと栄養不足に陥り健康を損なう可能性があるので、栄養バランスを整えながらカロリー量を調整する必要があります。

こんにゃく100gあたりのカロリーは多い順に、生いもこんにゃく8kcal、しらたき7kcal、赤こんにゃく6kcal、精粉5kcalで※、いずれも効率よく摂取カロリーを減らせるでしょう。

 

便通を促してくれる可能性

こんにゃくにも含まれている食物繊維※は、腸内細菌の餌になり善玉菌の増加につながるため腸内環境を整えて便通を促してくれると考えられます。

また悪玉菌を増やさないように食べ物だけでなく規則正しい生活や運動も必要になりますが、悪玉菌が増えると腸内環境が悪化して便通の促進につながらない可能性もあるためです。もし便秘が長期的に続く場合は、他の疾病の可能性も考えられるため医師に相談しましょう。

 

ナトリウム(塩分)を排泄してくれる

こんにゃくにも含まれているカリウム※は体内に余分に蓄積されたナトリウム(塩分)を体外へ排泄する作用があります。ナトリウム(塩分)の摂り過ぎは高血圧につながることから、カリウムの摂取は高血圧を防ぐと考えられています。

 

骨や歯をつくる材料となる

カルシウムは骨や歯の主成分です。こんにゃくを使った実験で、胃酸を想定した塩酸溶液(0.1N)にどれくらいのカルシウムが溶出するのかを調べたところ、板こんにゃくは74%ほど、しらたきは93%ほど溶出し、また板こんにゃくも細切りにすると溶出率が上がったとの報告がありました。

塩酸溶液以外にもこんにゃくカルシウムの水溶液や食塩水、食酢などでも試しており、それらの結果からこんにゃくカルシウムは吸収利用される確率が高いと考えられています。

100gあたりのこんにゃくに含まれているカルシウムは、精粉こんにゃくが43mg、赤こんにゃく46mg、生いもこんにゃく68mg、しらたきは75mgです。 


貧血の予防につながる

鉄はヘモグロビンの材料です。ヘモグロビンは体内で酸素を運搬する重要な構成要素であり、不足するとめまい、たちくらみ、息切れなどを起こす可能性があります。

鉄の吸収は、摂取した量の15%程度と言われています。こんにゃく100gあたり、板こんにゃく(精粉)が0.4mg、 板こんにゃく(生いも)が0.6mg、しらたきが0.5mg、赤こんにゃくが78.0mgなので※、単純計算でそれぞれ約0.06mg、約0.09mg、約0.08mg、約11.7mgの鉄が吸収されるとの推定が可能です。

 

甲状腺ホルモンの材料となる

私たちの体全体の代謝や成長を調節してくれているのが、甲状腺ホルモンです。しかし甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素が不足すると、バセドウ病や橋本病などの甲状腺機能障害を引き起こす可能性があります。

ヨウ素はミネラルの一種で、摂取したヨウ素のほとんどは消化管で吸収されるのが特徴です。 4種類のうち、生いもこんにゃくには100gあたり93μgのヨウ素が含まれています。

 

こんにゃくの効果的な食べ方

“こんにゃく”

こんにゃくを効果的に食べるためのいくつかのポイントを説明します。ただしこんにゃくはその食物繊維の多さから、人によってはお腹を下す可能性もあるので摂取量には注意しましょう。

 

糖質・脂質と一緒に食べる

食物繊維には糖質や脂質を排泄する働きがあります。そのため糖質や脂質が多い食品と一緒に食べることでこれらの栄養素の吸収を抑制し、生活習慣病の予防・改善につながると考えられるでしょう。

また、こんにゃくにはプリプリとした弾力があるため、ゆっくりと噛む回数を増やすと満足感が得やすく、食べ過ぎ予防につながる可能性があります。

 

野菜や海藻類、きのこ類なども合わせる

こんにゃくは低カロリーで食物繊維が含まれるスーパーフードとも言えますが、単体で全ての栄養素を補うことはできません。そこで、こんにゃくに含まれていないビタミンやミネラルを補うために野菜や海藻類、きのこ類などの食材を組み合わせるのがおすすめです。

ダイエット中は五大栄養素である炭水化物、脂質、たんぱく質、ミネラル、ビタミンのバランスを考えた食生活を心がけましょう。また適度な運動、十分な睡眠も大切です。

 

こんにゃくを上手に活用しよう!

“こんにゃく”

こんにゃくは食物繊維やミネラルなどを含んでおり、低カロリー、低糖質でダイエットや健康維持に最適な食材と言えるでしょう。 種類によって食感や調理方法が異なるので、好みやメニューに合わせておいしく味わってくださいね。



参考文献

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貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう 厚生労働省 eヘルスネット 最終確認日:2024年6月28日
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実践食育ナビ 食事バランスガイドと従来の分類法との関連 農林水産省 最終確認日:2024年6月28日 https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/guide.html