キヌアとは何かを簡単に解説!白米や玄米との違いや含有栄養素の効果とは

近年、スーパーフードとして注目を集める「キヌア」。その栄養価の高さから健康志向の人々の間で人気が高まっています。しかしキヌアと聞いても、どんなものかよく分からないという方も多いのではないでしょうか。

この記事ではキヌアとは何か、その栄養価や食べ方などを分かりやすく紹介します。精白米や玄米など他の穀物との違いも解説するので、キヌアについて知りたい、これからキヌアを食生活に取り入れてみたいと考えている方はぜひ参考にしてください。

 

キヌアとは何かを簡単に解説

“キヌア”

キヌアは南米アンデス山脈の高地で古くから栽培されている穀物の一種です。学名では英語で「Chenopodium quinoa」と表記されています。

見た目は小さな粒状でアワやヒエのような雑穀に分類されますが、実はホウレンソウと同じヒユ科の植物です。そのため厳密には穀物ではなく「擬似穀物」とされています。

アメリカのNASAがキヌアの栄養価の高さから21世紀の主要な食料と発表したことで話題になり、実際に宇宙飛行士の食料としても採用されています。2013年には国連総会で「キヌア国際年」が宣言され、広く世界に認知されるようになりました。

 

キヌアとクスクスの違い

キヌアと見た目が似ている食べ物に「クスクス」がありますが、これらは原料や栄養価が全く異なります。キヌアは植物の種子であるのに対し、クスクスはデュラム小麦が原料で粒状にしたパスタに近い食品です。

 

キヌアとオートミールの違い

オートミールはイネ科の作物で燕麦(エンバク)、一般的には「オーツ麦」と呼ばれる原料の種子を粉末やフレーク状などに加工した食品です。健康志向の人に人気の食材ですが、キヌアとは栄養価が異なります。詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

 

キヌアがスーパーフードとして注目されている背景

“キヌア”

キヌアがスーパーフードとして世界中で注目されている背景には、主に2つの理由が挙げられます。

1つ目は、乾燥地帯や高地など厳しい自然環境下でも生育できるという、高い環境適応能力を持っている点です。気候変動などの変化にも対応できると考えられています。

2つ目は、他の穀物に比べてたんぱく質やビタミン、ミネラルなど高い栄養価を誇る点です。栄養価については後述します。

キヌアと同様にスーパーフードと呼ばれているアサイーやチアシードについては以下を参考にしてください。

 

キヌアの栄養成分

“キヌア”

キヌアにはたんぱく質、食物繊維、ビタミン、ミネラルがバランスよく含まれています。その栄養素の高さを確認するため、キヌアと白米および玄米の5大栄養素、アミノ酸の比較を行ってみましょう。

 

キヌアと精白米および玄米の5大栄養素の違いで比較

まずは5大栄養素の中で差が大きい栄養素の比較です。キヌアも精白米も玄米も主食として利用されることの多い穀物ですが、栄養成分は大きく異なります。

 

キヌア

精白米
(水稲穀粒)

玄米

エネルギー(kcal)

344 342 346

たんぱく質(g)

13.4 6.1 6.8

脂質(g)
(一価不飽和脂肪酸、n-3系多価不飽和脂肪酸、n-6系多価不飽和脂肪酸)

3.2
(0.77、0.19、1.34)
0.9
(0.21、0.01、0.30)
2.7
(0.83、0.03、0.87)

炭水化物(g)
(糖質、食物繊維)

69.0
(62.8、6.2)
77.6
(77.1、0.5)
74.3
(71.3、3.0)

カリウム(mg)

580 89 230

カルシウム(mg)

46 5 9

マグネシウム(mg)

180 23 110

リン(mg)

410 95 290

鉄(mg)

4.3 0.8 2.1

亜鉛(mg)

2.8 1.4 1.8

マンガン(mg)

2.45 0.81 2.06

βカロテン(μg)

11 0 1

αートコフェロール(mg)

2.6 0.1 1.2

ビタミンB1(mg)

0.45 0.08 0.41

ビタミンB2(mg)

0.24 0.02 0.04

ナイアシン(mg)

1.2 1.2 6.3

ビタミンB6(mg)

0.39 0.12 0.45

葉酸(μg)

190 12 27

ビオチン(μg)

23 1.4 6

※すべて100gあたりの量
※出典:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
※糖質は「炭水化物量-食物繊維量」で算出


キヌアのエネルギーは精白米や玄米と同等ですが、たんぱく質は約2倍、カリウム・カルシウム・鉄・亜鉛などのミネラル、α-トコフェノール、ビタミンB2、葉酸、ビオチンなどのビタミンが多く含まれています。キヌアの脂質は、体に良いとされる不飽和脂肪酸が多く含まれているのも特徴です。

 

キヌアと精白米および玄米のアミノ酸の種類で比較

今度はアミノ酸の種類をみて比較しましょう。たんぱく質は、さまざまな種類の小さなアミノ酸が鎖のように連なって構成されています。

 

キヌア

精白米(水稲穀粒)

玄米

イソロイシン(mg)

480 250 280

ロイシン(mg)

810 500 560

リシン(mg)

720 220 270

メチオニン(mg)

260 150 160

シスチン(mg)

210 140 160

フェニルアラニン(mg)

510 330 360

チロシン(mg)

380 240 320

トレオニン(mg)

500 230 270

トリプトファン(mg)

170 85 100

バリン(mg)

590 360 420

ヒスチジン(mg)

380 170 190

アルギニン(mg)

1,100 510 600

アラニン(mg)

550 340 390

アスパラギン酸(mg)

1,100 580 660

グルタミン酸(mg)

1,800 1,100 1,200

グリシン(mg)

690 290 340

プロリン(mg)

470 300 330

セリン(mg)

610 350 390

※すべて100gあたりの量
※出典:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年


キヌアはアミノ酸をバランスよく含んでいるのが特徴です。イソロイシン、トレオニンなど食事から摂取する必要のある必須アミノ酸が精白米や玄米の約2倍含まれているものも多くあります。玄米も少なくありませんが、総合的にみるとキヌアはそれを上回っていると言えるでしょう。

 

キヌアに含まれる栄養素の効果とは

“キヌア”

キヌアは私たちの体に必要な栄養素を多種多様に含んでいますが、健康な身体づくりにはキヌアだけでなく様々な食品からバランスよく栄養素を摂取することが大切です。

キヌアの栄養素が体にどのような働きをするのかを理解すれば、他の食品との組み合わせ方が分かりやすくなります。健康効果を最大限に引き出すためにも、その栄養素について深く掘り下げてみましょう。

 

鉄の補給で鉄欠乏性貧血をサポート

キヌアは鉄が多く含まれており、ビタミンCの多い食材を一緒に摂ると鉄の吸収率が上がると言われています。鉄は私たちの体に必要なミネラルの一種で、私たちの体内で赤血球中のヘモグロビンを構成する重要な成分です。ヘモグロビンは肺から取り込んだ酸素を全身の細胞に運ぶ役割を担っています。

鉄が不足するとヘモグロビンが十分に合成できなくなり、結果として全身の細胞に酸素を運ぶ能力が低下し、酸欠状態となります。これが、鉄欠乏性貧血を引き起こす原因です。主に疲労感、息切れ、頭痛などの症状を引き起こします。

体の代謝により個人差はありますが、一般的に推奨される鉄の摂取量は1日あたり成人男性で7.5mg、女性では10.5mg(月経のない女性は6.5mg)です。

 

マグネシウム・カルシウムの補給で骨づくりをサポート

キヌアにはマグネシウムとカルシウムも含まれています。

マグネシウムは骨の健康維持や神経情報の伝達・代謝をサポートする働きがあります。1日あたりに必要なマグネシウムの推奨量は、成人男性の場合320mgから370mg、成人女性の場合260mgから290mgです。

カルシウムは骨や歯を形成し、また骨粗しょう症などを予防する働きがあります。1日あたりに必要な推奨量は、成人男性が700mgから800mg、女性が600から650mgです。

適度な運動も骨の強度を高めるのに役立つため、キヌアを食べるだけでなく適度な運動も大切です。

 

ビタミンB群の補給でエネルギー産生をサポート

キヌアはビタミンB1、B2、B6も多いです。これらのビタミンB群は補酵素として主にエネルギー代謝をサポートしますが、具体的な働きは各々で異なり、例えばビタミンB1はグルコース代謝やアミノ酸代謝、ビタミンB2は共通のエネルギー代謝、脂肪酸代謝、ビタミンB6はアミノ酸代謝で活躍します。

 

キヌアはそのまま食べられる?キヌアの食べ方

“キヌア”

キヌアは生で食べることはできません。必ず加熱調理をしてから食べましょう。キヌアは味にクセがなく、加熱調理すると独特のプチプチとした食感が特徴で様々な料理に活用できます。

白米にキヌアを混ぜて炊いたりサラダのトッピングやスープの具材などに加えたりすると、彩りも良い上に栄養価もアップします。ハンバーグやミートボールに加えるメニューなどもあり、アクセントのある食感が楽しめます。

またキヌアの粉末を加えるとお菓子作りにも活用できるので、いろいろ試してみてください。

 

キヌアとは雑穀の一種でスーパーフード作物!

“キヌア”

キヌアは高栄養が摂取できると世界中から高い評価を得ているスーパーフードです。特にたんぱく質、鉄などのミネラル、ビタミンを補うのに最適と言えます。

プチプチする食感を始め、雑穀の一種として主食としても主菜・副菜としても利用できるのも魅力です。白米や玄米と混ぜて栄養不足を補うなど、ぜひキヌアをいつものメニューに活用しませんか?



参考文献

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アミノ酸 eヘルスネット 参照年月日:2024年8月12日
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-001.html

鉄 eヘルスネット 参照年月日:2024年8月12日
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貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう eヘルスネット 参照年月日:2024年8月12日
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カルシウム eヘルスネット 参照年月日:2024年8月12日 
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