
PFCバランスとは?計算方法や理想の基準値
PFCバランスとは健康的な体づくりやダイエットに役立つ栄養バランスの指標です。健康体を維持したい方はもちろん「摂取エネルギー(カロリー)を減らしても体重に変化がない」「筋トレの効果が感じられない」という方は、PFCバランスを活用した食生活に変えてみてはいかがでしょうか?
本記事ではPFCバランスや理想の基準値について解説します。PFCバランスの計算方法についても具体的に紹介していますので、PFCバランスを実践したい方はぜひ読み進めてみてください。
PFCバランスとは
PFCバランスとは、五大栄養素のうちエネルギー源となる3つの栄養素(エネルギー産生栄養素とも言われる)における摂取カロリーの比率のことです。Protein(たんぱく質)、Fat(脂質)、Carbohydrate(炭水化物)の頭文字をとってPFCと言われています。
PFCバランスを整えることは生きるために必要なカロリーをバランス良く摂るために重要で、健康体や筋トレ、ダイエットをする上での土台づくりに不可欠です。PFCバランス含め栄養バランスが良いとして和食が挙げられるケースが多いですが、それは同時に和食がユネスコ無形文化遺産に登録された理由や健康食として世界で流行っている理由でもあります。
なお最も理想的なPFCバランスの良い食事は、1980年頃日本で食べられていた食事だと考えられています。ご飯と味噌汁を基本に焼き魚や煮物、お浸しなどのおかずを食べるという和食の基本形です。しかし2010年以降の日本では肉や油の摂取量が増えており、PFC比は欧米のバランス、炭水化物が少なく脂質が突出して多い形、に近づいてきています。
Protein(たんぱく質)
たんぱく質は肉や魚、卵、大豆などに多く含まれており、筋肉や皮膚、髪を作るのに必要な成分です。特に筋トレをする方は筋肉増量や維持に、ダイエットを目指す方はキレイな肌や髪の毛づくりに役立ちます。また、たんぱく質はホルモンや酵素・抗体などの成分としても重要です。不足すると体力や免疫機能が低下する恐れがあるため、しっかりと摂取しましょう。
Fat(脂質)
脂質は細胞膜を構成する成分です。たんぱく源を摂取すると脂質も含まれるため、より効率的に筋トレやダイエットをされる方はたんぱく源の種類も意識するのがおすすめです。例えば肉類に多い飽和脂肪酸を減らして、魚類や植物性食品などに多い不飽和脂肪酸を増やすと良いでしょう。
Carbohydrate(炭水化物)
炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたものです。糖質は体内でエネルギー源となり、ご飯やパン、芋、果物、砂糖などに多く含まれます。健康づくりや筋トレ、ダイエットを効率的にするなどの理由で糖質を控えている方もいますが、減らしすぎはよくありません。特に筋トレをする方は十分な糖質の摂取は必要です。例えば運動強度が低い時には糖質・脂質とも同程度の割合で利用されますが、高い時に利用されるのは脂質よりも糖質の方が大きいことが明らかになっています。
実際に2010年の国際オリンピック委員会によるトレーニングにおける糖質摂取ガイドラインでも運動強度が高いほど糖質の摂取目安量が多かったり、運動前や運動中の糖質摂取目安量を設定されていたり、捕食が推奨されていたりします。
またダイエットをする方は過度に糖質を減らし過ぎるなどの健康障害も問題になっています。糖質を減らしすぎるとカロリーが不足し、集中力の低下や疲労感があらわれるので注意しましょう。
一方、食物繊維は消化されずに腸まで届き、腸内環境を整えるのに役立ちます。
PFCバランスの理想は?計算方法もご紹介
PFCバランスの理想的な比率はたんぱく質13〜20%、脂質20〜30%、炭水化物50〜65%とされています。しかし、比率が分かっても何をどれくらい食べれば良いのかイメージできないという方もいるでしょう。そこで「Atwater(アトウォーター)係数」を使ってPFCバランスを整える方法を紹介します。
<以下のAtwater係数の数値を用いて計算します>
- たんぱく質1g・・・4kcal
- 脂質1g・・・9kcal
- 炭水化物1g・・・4kcal
<手順>
- 1日に摂取したいカロリー量を決めます。厚生労働省が定めている「日本人の食事摂取基準」を参考にすると良いでしょう。
- PFCそれぞれのエネルギー比率を計算します。
- PFCそれぞれの重量を計算します。
1~3をまとめると、
- たんぱく質(g)= エネルギー摂取量(kcal)× 13~20% ÷ 4
- 脂質(g)= エネルギー摂取量(kcal)× 20~30% ÷ 9
- 炭水化物(g)= エネルギー摂取量(kcal)× 50~65% ÷ 4
となります。
食事摂取基準の推定エネルギー必要量を年齢と性別ごとにまとめましたので、参考にしてください。次の項目で男女別に計算の具体例を紹介します。
年齢(歳) |
男性(kcal / 日) |
女性(kcal / 日) |
18~29 |
2650 | 2000 |
30~49 |
2700 | 2050 |
50~64 |
2600 | 1950 |
65~74 |
2400 | 1850 |
75以上 |
2100 | 1650 |
※推定エネルギー必要量(kcal / 日)身体活動レベル2
※日本人の食事摂取基準(2020年版)
男性の場合
食事摂取基準の推定エネルギー必要量(身体活動レベル2)で計算してみました。【20代の方:2650kcal】
たんぱく質約86〜133g、脂質約59〜88g、炭水化物約331〜431gが理想的なPFCバランスです。
- たんぱく質(g):2650(kcal)× 13~20% ÷ 4 = 86.1~132.5g
- 脂質(g):2650(kcal)× 20~30% ÷ 9 = 58.9~88.3g
- 炭水化物(g):2650(kcal)× 50~65% ÷ 4 = 331.3~430.6g
【30~40代の方:2700kcal】
たんぱく質約88〜135g、脂質約60〜90g、炭水化物約338~439gが理想的なPFCバランスです。
- たんぱく質(g):2700(kcal)× 13~20% ÷ 4 = 87.8~135g
- 脂質(g):2700(kcal)× 20~30% ÷ 9 = 60~90g
- 炭水化物(g):2700(kcal)× 50~65% ÷ 4 = 337.5~438.8g
【50代の方:2600kcal】
たんぱく質約85〜130g、脂質約58〜87g、炭水化物約325〜423gが理想的なPFCバランスです。
- たんぱく質(g):2600(kcal)× 13~20% ÷ 4 = 84.5~130g
- 脂質(g):2600(kcal)× 20~30% ÷ 9 = 57.8~86.7g
- 炭水化物(g):2600(kcal)× 50~65% ÷ 4 = 325~422.5g
女性の場合
食事摂取基準の推定エネルギー必要量(身体活動レベル2)で計算してみました。
【20代の方:2000kcal】
たんぱく質65〜100g・脂質約44〜67g・炭水化物250〜325gが理想的なPFCバランスです。
- たんぱく質(g):2000(kcal)× 13~20% ÷ 4 = 65~100g
- 脂質(g):2000(kcal)× 20~30% ÷ 9 = 44.4~66.7g
- 炭水化物(g):2000(kcal)× 50~65% ÷ 4 = 250~325g
【30~40代の方:2050kcal】
たんぱく質約67〜103g・脂質約46〜68g・炭水化物約256〜333gが理想的なPFCバランスです。
- たんぱく質(g):2050(kcal)× 13~20% ÷ 4 = 66.6~102.5g
- 脂質(g):2050(kcal)× 20~30% ÷ 9 = 45.6~68.3 g
- 炭水化物(g):2050(kcal)× 50~65% ÷ 4 = 256.3~333.1g
【50代の方:1950kcal】
たんぱく質約63~98g、脂質約43~65g、炭水化物約244~317gが理想的なPFCバランスです。
- たんぱく質(g):1950(kcal)× 13~20% ÷ 4 = 63.4~97.5g
- 脂質(g):1950(kcal)× 20~30% ÷ 9 = 43.3~65g
-
炭水化物(g):1950(kcal)× 50~65% ÷ 4 = 243.8~316.9g
PFCバランスを実践する時のポイント
ここからはPFCバランスを実践する時に意識したい点をご紹介します。ただし健康のためにはPFCバランスなど食事への意識だけでなく適度な運動や十分な睡眠も大切なので、その点も留意した上で取り組んでください。
ビタミン・ミネラルも摂る
ヒトが生きる上で欠かせない五大栄養素のPFC以外の2つはビタミンとミネラルです。ビタミンやミネラルは体内の機能を正常に働かせるために欠かせない栄養素で、体内ではほとんど合成できないため必要量を食事から摂らなければなりません。
ビタミンは野菜や果物に多く含まれます。ミネラルは肉類や魚類、乳製品にも多く含まれる成分もありますが、野菜やきのこ類、海藻類からの摂取も大切です。
例えば主食(炭水化物)や主菜(脂質・たんぱく質)と一緒に、にんじんや大根、わかめの入った味噌汁やひじきの煮物、ほうれん草のお浸しなどの副菜も取ると良いでしょう。
偏った食事はNG
サラダだけ・プロテインだけなど特定の食事だけに偏ると逆効果になるため注意しましょう。偏った食事は必要な栄養素が不足し不調の原因となります。
またダイエットをされている方は特に、カロリーや栄養を極端に制限するとリバウンドするかもしれません。視野を広く持ち、いろいろな食材やメニューを楽しみましょう。
間食はコントロールする
厚生労働省の基準において、間食の適量は1日200kcal程度とされています。洋菓子やスナック菓子などは脂質や糖質が多く、PFCバランスが崩れやすいため注意が必要です。甘い飲み物は選ばない・栄養バランスを考えて間食を選ぶなどの工夫をして、食べたい気持ちと上手に付き合っていきましょう。
PFCバランスを取り入れて土台づくりを!
PFCバランスのとれた食事は健康づくりや筋トレ、ダイエットなどの土台作りに必要です。和食の基本であるご飯と味噌汁、主菜と副菜の食事はPFCバランスが良く、世界でも健康食として注目されています。この機会に食生活を見直し、PFCバランスのとれた食事に変えていきましょう。
参考文献
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https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-013.html
栄養バランスの優等生、「和食」 農林水産省 参照日 参照年月日2024年9月27日 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/attach/pdf/index-54.pdf
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スポーツと糖質~アスリートの基本の食事~ 独立行政法人農畜産業振興機構 参照年月日2024年9月27日
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_003153.html
若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題 e-ヘルスネット 厚生労働省 参照年月日2024年9月27日
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-006.html
1-5エネルギー産生栄養バランス 厚生労働省 参照年月日2024年9月27日 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000083872.pdf
日本人の食事摂取基準(2020年版) 厚生労働省 参照年月日2024年9月27日 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf