大麦・もち麦の違いは何?丸麦・押麦・オーツ麦などとの違いも解説

大麦やもち麦は健康意識の高まりから注目を集めている食材ですが、その違いについてはよく知らないと言う方もいるのではないでしょうか?

この記事では大麦ともち麦の違いや、丸麦・押麦といった呼び方の違いを紹介しています。大麦とオーツ麦、玄米などの栄養素の違いも解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

 

大麦・もち麦の違いと特徴

大麦のイメージ”

もち麦とは、大麦の一種です。大麦には粘りの少ない「うるち性」の品種と、ねばりの強い「もち性」の品種があり、「もち性」の大麦を総称して「もち麦」と呼んでいます。もち麦はアミロペクチンと言うねばり気のあるデンプンを含み、モチモチとした食感が特徴です。

大麦の分類を詳しく見ていきましょう。まず大麦は皮が離れにくい「皮麦」と皮がポロポロと離れる「はだか麦」に分かれます。

皮麦とはだか麦には、それぞれ二条大麦と六条大麦と言う種類があります。二条大麦は、6列ある麦の穂のうち2列だけに実がつく種類で、主に焼酎やビールの原料として使われるのが特徴です。六条大麦は、6列の穂すべてに実がつく種類で、主に主食用や麦茶の原料として使用されます。

大麦は、さらに加工方法の違いで「丸麦(まるむぎ)」「押麦(おしむぎ)」「白麦(はくばく)」「米粒麦(こめつぶむぎ)」の4つに分類されています。大麦をこのように加工する目的は、食感や見た目、調理の利便性を向上させることです。4つの加工方法によって大麦がどのように変わるのか、それぞれの特徴を解説します。

丸麦(まるむぎ)とは

丸麦は、大麦から外皮を取り除き、ぬかの部分を削って丸くしたものです。「とう精」と言う大麦の粒を磨く工程を3段階に渡って行い、蒸煮、乾燥・冷却、選別を経て製品に加工されます。 

丸麦は、味噌や焼酎の原料として利用されることが多い加工法です。丸麦は主食用としても活用され、白米に混ぜて炊くとプチプチとした食感を楽しめます。

押麦(おしむぎ)とは

押麦は、外皮を取り除いた大麦(丸麦)の黒線部分だけを残して蒸し、それから平らにつぶしたものです。大麦はそのままの状態では硬くて吸水性が低いため、お米と一緒に炊きやすくする目的で押麦に加工されます。

3段階の「とう精」を行って粒を磨く工程までは丸麦と共通していますが、その後に蒸した大麦をローラーで1mm程度の厚さにつぶし、乾燥・冷却、選別をして製品に仕上げます。

押麦に加工されることが多い大麦の種類は、うるち性です。押麦はサラッとしているのが特徴で、米と一緒に炊いて山いもをすりおろしたものをかけて食べる「麦とろごはん」と良く合います。

白麦(はくばく)とは

白麦は、外皮を取り除いた大麦(丸麦)を真ん中の「黒条線」と言うラインでカットし、押し麦のように蒸してからつぶして加工したものです。黒いスジに沿って大麦をカットすることで、米の粒と同じくらいの大きさになります。

大麦を白麦に加工する時は、1回目の「とう精」が終わったあとに黒条線の部分でカットします。次に2回目、3回目の「とう精」を行い、蒸してからローラーで平らにして、乾燥・冷却、選別を経て製品になるのです。白麦は半分にカットされていることから、米と混ぜて炊いた時に食べやすいでしょう。

米粒麦(こめつぶむぎ)とは

米粒麦は、白麦と同じように黒条線で大麦をカットしたものですが、ローラーでつぶしていないため、米に近い形をしています。1回目の「とう精」を行った後に真ん中でカットし、それから2回目の「とう精」、蒸し煮、冷却、乾燥、3回目の「とう精」、選別と言う順序で製品に仕上げられます。

米粒麦は見た目が白く、食感も米に似ていることから、白米に近い感覚で食べられる加工方法です。

 

大麦・オーツ麦・小麦・ライ麦の違い

大麦のイメージ”

大麦・オーツ麦・小麦・ライ麦は名前に「麦」がついていますが、どのように違うのでしょうか?これらは全て「麦」と分類され、大麦とオーツ麦・小麦・ライ麦は親せきに当たりますが、異なる種類の麦です。

まず、大麦と小麦の違いを確認してみましょう。大麦と小麦は、たんぱく質の組成に違いがあります。

小麦に含まれるたんぱく質は、粘り気があって吸水性が低く、パンを作るのに使うとふんわり仕上がり、麺はコシが出ます。それに対して、大麦に含まれるたんぱく質は粘り気が少なく、小麦よりも吸水性が高いことから、米と一緒に炊くとおいしく食べられるのが特徴です。

ライ麦は小麦よりも色が濃く、製粉してライ麦粉にして活用します。挽き立てであればあるほど、味わい深い風味のあるライ麦パンとして楽しめます。

大麦やオーツ麦、ライ麦は、雑穀と分類されることもあります。雑穀についての詳細は、以下の記事をご覧ください。
雑穀とは何ですか?種類や栄養、使い方など

オーツ麦とは

オーツ麦は、燕麦(エンバク)と呼ばれる穀物です。種子がオートミールとして食用にされていますが、そのままでは食べられないため、蒸したり押麦のようにつぶしたりして加工されます。オートミールについて詳しく知りたい方は、以下を参考にしてください。
オートミールとは何か?カロリーや糖質など白米との違いを簡単に解説

 

大麦・オーツ麦・白米・玄米を比較!含有する栄養素の違い

大麦のイメージ”

ここからは、大麦・オーツ麦・白米・玄米の違いを栄養素の面で比較してみましょう。食物繊維・ミネラル・ビタミンの項目別に栄養素の含有量を紹介します。

食物繊維

食物繊維は食べ物から摂取すると小腸で消化・吸収されず、大腸まで到達して便の体積を増やしたり、有用な腸内細菌を増やしたりするのに役立つ難消化性の成分です。大麦・オーツ麦・玄米・精白米の食物繊維量を、以下の表にまとめています。

 

水溶性食物繊維(g)

不溶性食物繊維(g)

食物繊維総量(g)

おおむぎ/押麦/乾

4.3 3.6 7.9

大麦(もち麦)

- - 12.8

オーツ麦(えんばく/オートミール)

3.2 6.2 9.4

水稲穀粒/玄米

0.7 2.3 3.0

水稲穀粒/精白米/うるち米

Tr(微量) 0.5 0.5

※すべて100gあたりの量
※出典:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
※もち麦のみ、はくばく社の成分を参考

大麦やオーツ麦などの麦類は、玄米や白米に比べて食物繊維の含有量が多いことが分かります。特に、もち麦は100gあたりの食物繊維量が12.8gと、押麦やオーツ麦よりも多く含まれています。 

β-グルカンとは

大麦の胚乳には「β-グルカン」と言う水溶性食物繊維が含まれ、もち麦には一般にうるち性の大麦に比べて約1.5倍のβ-グルカンが含まれると言われています。大麦に含まれるβ-グルカンは、機能性表示食品の関与成分として次のような機能が認められています。

・高めのLDL-コレステロール値を低減させる、腸内環境を整える
・食後血糖値の上昇を抑える

ミネラル

大麦に特に多く含まれるミネラルとして、カリウム・マグネシウム・鉄・マンガンがあります。カリウムは、体内で細胞内液の浸透圧を調節したり体液のpHバランスを保ったりする役割を担うミネラルです。筋肉の収縮やナトリウムの排出にも関わっています。

マグネシウムは、骨や歯、筋肉、脳・神経に含まれるミネラルで、体内にある300種類以上の酵素を活性化させたり、神経情報の伝達や体温・血圧の調整をサポートしたりする栄養素です。鉄は主に赤血球や筋肉中に存在し、不足すると赤血球に含まれるヘモグロビンの数が減って、酸素が全身に運ばれにくくなります。

マンガンは骨や様々な体内に存在し、金属酵素を構成する成分です。大麦・オーツ麦・玄米・精白米に含まれる代表的なミネラルの量は、以下の通りです。

 

カリウム(mg)

マグネシウム(mg)

鉄(mg)

マンガン(mg)

おおむぎ/押麦/乾

210 40 1.1 0.86

オーツ麦(えんばく/オートミール)

260 100 3.9 -

水稲穀粒/玄米

230 110 2.1 2.06

水稲穀粒/精白米/うるち米

89 23 0.8 0.81

※すべて100gあたりの量
※出典:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

オーツ麦はカリウム・マグネシウム・鉄の含有量が、大麦や米よりも多くなっています。精白米は4つの成分とも低くなっていますが、それは精米することで糠や胚芽が取り除かれ、その分ミネラルの量も減るためです。 

ビタミン

ビタミンの含有量についても、比べてみましょう。以下の表では大麦・オーツ麦・玄米・精白米に含まれるビタミンB₆の量を比較しています。

 

ビタミンB6(mg)

おおむぎ/押麦/乾

0.13

オーツ麦(えんばく/オートミール)

0.11

水稲穀粒/玄米

0.45

水稲穀粒/精白米/うるち米

0.12

※すべて100gあたりの量
※出典:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

玄米には、大麦・オーツ麦・精白米に比べてビタミンB₆が多く含まれています。

 

もち麦は大麦の一種!うまく生活に取り入れよう

大麦のイメージ”

大麦は押麦や米粒麦などに加工して食べやすくなる上、精白米と比べると主なミネラルやビタミンが多く含まれています。大麦の一種であるもち麦はモチモチとした食感が特徴で、食物繊維が多いのが特徴です。

大麦を米と一緒に炊いて麦ごはんにしたり、サラダやスープに加えたりして、いつもの食事をより健康的にするためにも、大麦を活用してみてはいかがでしょうか?


参考文献

公式HP 農林水産省 参照年月日:2025年5月26日 https://www.maff.go.jp/
刊行物 NARO農研機構 参照年月日:2025年5月26日 https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/
もち麦800g 株式会社はくばく 参照年月日:2025年5月26日 https://www.hakubaku.co.jp/products/barley/211/
精麦ってな~に 全国精麦工業協同組合連合会 参照年月日:2025年5月26日 
https://zenbakuren.or.jp/study/whatsbarley.html
生活習慣病などの情報 厚生労働省 参照年月日:2025年5月26日 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/
機能性表示食品検索 消費者庁 参照年月日:2025年5月26日 https://www.fld.caa.go.jp/caaks/s/cssc01/
(2)微量ミネラル 厚生労働省 参照年月日:2025年5月26日 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316469.pdf