不安がたくさん…食物アレルギーのある子どもとの帰省を楽しむためには

食物アレルギーのある10代の子どもと暮らすライターが、アレルギー対応をする中で得た知識や経験したこと、生活の工夫について、連載でコラムをお届けします。今回のテーマは「食物アレルギーのある子どもとの帰省について」です。

食物アレルギーのある子どもとの帰省は、慣れない環境に症状が出るリスクが高まるため、とても気を遣います。万が一、症状が出ても、お盆やお正月の帰省は休診の病院が多く、医療にアクセスしにくい状況です。このような状況下で「絶対に症状を出したくない」という親の心配はいつも以上に強まります。

このように食物アレルギーのある子どもとの帰省は少しハードルの高いものです。そのなかでも親が感じやすい3つの不安と、私自身が帰省時にしてもらって嬉しかったことを紹介します。

 

食事の不安

帰省のスケジュールが決まったら、すべての食事を安全に終えるため、考えられる食事のシーンを想定し下調べします。大人と同じ内容・量を食べる年齢なら、帰省先(ホテル、実家等)に食事についてあらかじめ相談しておく必要があります。

我が家の場合、子どもが小学校低学年までは、両家の実家にトータル1週間程度帰省していました。食事を作ってくれる両家の母に息子が食べられるものと食べられないものを説明。私自身も一緒に料理をしたり、料理を運ぶ際に原材料が不明なものは聞いたりして、その都度確認していました。

 

ホテルに宿泊する場合は、まず食事のアレルギー対応が可能かホテルに問い合わせます。ホテルの規模やアレルゲンの多少、症状の程度などによって対応していない場合もあるので、その際は、お弁当の持参、コンビニで購入、アレルギー表示のある飲食店の利用で乗り切ります。移動中の食事も同様です。子どもが乳幼児のときはレトルト食品を多めに持参していました。

どれだけ準備をしても、食事に関する不安は尽きません。ただ、食事は単に食べることだけでなく、さまざまな役割を果たしています。食物アレルギーを持つ子どもたちは、自宅以外での食事機会が少ないため、祖父母や親戚との食事はとても貴重な機会だと考えています。

 

無理解への不安

帰省先の祖父母や親戚がアレルギーについて理解してくれるだろうか…という不安も最初の頃大きかったです。理解がない場合はとても大変で、帰省が辛いものになってしまいます。心無い言葉に傷つくことも多いです。

アレルギーについて認識があまりない方と会うときは、アレルギーがあることを丁寧に説明するようにしています。なかでも「食べると命にかかわるほど危険」ということは絶対に話します。「勝手に食べさせないで」「好き嫌いではなく食べられない」というメッセージを一番に伝えたいからです。

 

曖昧な説明で済ませると、理解してもらえずに「少しなら食べられるだろう」と言われたり、親に確認せずに子どもに食べさせられたりすることも少なくありません。軽い気持ちで食べるように促してしまう大人はこれまでにも多く出会いました。

初めて会う親戚にズバズバと話すのは勇気がいりますが「頻繁に会う相手じゃないから、軽く説明しておけば良いか」という気持ちを抑えて、遠慮せずに話すようにしています。何かあってからでは遅いからです。

 

環境の不安

子どもは、移動の疲れや環境の違いが影響して、発熱したり体調を崩したりすることがあります。我が家も、子どもたちが小さい頃は、帰省先で発熱して小児科を受診することが多かったです。帰省とは子どもにとって良くも悪くもストレスがかかる状況なのだなと思います。食物アレルギーの症状は、疲れやストレスでも出現しやすくなると医者から聞いてから注意するようにしています。

また、食物アレルギーを持つ子どもの中には動物アレルギー、喘息やアトピー性皮膚炎等を持つ子もいるため、帰省先で飼っているペットや、寝具、部屋の埃に反応することもあります。普段は大丈夫でも、少しの環境の違いが積み重なって症状が出やすくなる可能性があるため、私と同じように不安に感じる親も多いと思います。

 

帰省先でしてもらえると嬉しいこと

アレルギーのある方が身近にいないと、何に気をつければよいか、どう接すればよいか、きっと分からないはず。ここでは、私が過ごした帰省先での嬉しい経験や、気を付けてほしいことを紹介します。

 

パッケージを捨てずにとっておく

祖父母や親戚から「これには卵や乳は入っていないから食べられるよ」と言われても、パッケージの原材料を確認するまでは安心できません。相手を信用していないのではなく、自分で確認せずに症状が出てしまった場合、相手のせいにしたくないからです。原材料表記のなかには確認に慣れていないと判断がつきにくいものもあり、見落としてしまう可能性もあります。

しかし、包みが開けられている場合、パッケージは捨てられていることがほとんどです。パッケージがなければいくら「大丈夫だよ」と言われても安心して食べさせることはできず、泣く泣く諦めることになります。

パッケージがあると食べられる可能性が広がります。「パッケージ取っておいたよ」と言われると、心遣いを感じてとてもうれしいです。

 

「アレルギーがあってかわいそう」と言わない

「アレルギーがあってかわいそう」はよく耳にする言葉です。この言葉を言われて嫌な思いをすることは、アレルギーのある子どもを持つ親にとって「あるある」といってもいいでしょう。

「こんなにおいしいものが食べられなんてかわいそう」という軽い気持ちで言っていることは分かります。しかし、言われた方はとても嫌な思いをします。卵や乳製品を使わなくてもおいしい食事は食べられますし「食べられないこと=かわいそう」ではないからです。

アレルギーがあることは自分ではどうしようもないことです。お年寄りに「年を取っていてかわいそう」と言うのと同じだと私は思います。言われた人は「かわいそうなんて他人に言われる筋合いはない」と思うのではないでしょうか。アレルギーに限らず、どのような状況、病気の方にも「かわいそう」はかけるべき言葉ではないと思います。

 

アレルギー対応のおやつを用意してくれている

帰省に限らず、外出や旅行をする際、私はわが子が食べられるものをある程度用意します。帰省先の相手にこの商品を買っておいてほしいとお願いすることはほとんどありません。しかし、頼んでいないのにアレルギー対応のおやつを用意してくれていたり、親戚が持ってきてくれたりすると心の底から嬉しいです。

「食べられるものを調べてくれた」「息子のことを考えてくれた」という気持ちが何よりうれしいのです。何度か経験がありますが、こうした気遣いはいつまでも忘れずに心の中に残っています。

 

周囲の協力を得て安全で楽しい帰省にしよう

帰省先では「おいしいものを食べさせてあげたい」という思いから、食べ物をすすめられる機会が増えます。祖父母世代と食物アレルギーについての認識の差があると、断っても理解してもらえず、負担に思うこともあるでしょう。

安全で楽しい帰省のためには、何度も丁寧に説明するなど、帰省先とのコミュニケーションが欠かせません。曖昧に伝えるのではなく、はっきりと伝えたほうがリスクを避けられますが、たまにしか会わない祖父母や親戚に、遠慮なくズバズバと発言するのは気が引けるもの。アレルギーがある人への理解が進み、帰省がもっと気軽なものになるといいなと思います。

 

Text/鈴木りんご

ライタープロフィール

情報誌勤務を経てフリーランスのライターに。卵、乳製品、小麦、一部の魚にアレルギーのある10代の息子を子育て中の2児の母。食物アレルギー対応歴は10年を超えます。生活と食べ物は切り離せないため、食物アレルギーについてのアンテナは常に張っている状態。3年前には食物アレルギー対応をしながら台湾家族旅行も実現しました。今度は別の国にも行ってみたいなと妄想しています。