食物繊維はプラントベースの食事でどれくらい摂れる?おすすめの食材も紹介

プラントベースの食事を摂る際、食物繊維がどの程度含まれているのか気になる方は多いでしょう。プラントベースという選択で、健康に配慮した生活が果たして可能なのでしょうか?

この記事では、プラントベースの食事で食物繊維がしっかり摂れるかどうかを解説します。食物繊維の種類や働き、食物繊維のために摂りたいプラントベース食材も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

プラントベースとは?

プラントベースとは、植物由来の原材料を使用した食品や、植物由来の食べ物を中心に食べる食生活のことを指します。

プラントベースでは野菜や大豆製品、果物などの菜食を中心とした食生活を送りますが、ヴィーガンとは異なるため、動物性食品を全く口にしないわけではありません。ときには卵や乳製品などの動物性食品を食べることも可能です。

 

食物繊維とは?

プラントベースに限らず、「食物繊維を多く摂ったほうが良い」といった考え方を聞いたことがある方も多いでしょう。食物繊維とは一体、どのようなものなのでしょうか?

 

食物繊維の概要

食物繊維とは炭水化物の一種で、植物性の食べ物に特に多く含まれます。食物繊維は小腸で消化・吸収されませんが、体内を通過し排出される過程で、健康に不可欠なはたらきをもたらします。そのため現在では、五大栄養素に次ぐ「第6の栄養素」とも呼ばれている、重要なものです。

食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とがあります。

水溶性食物繊維は水に溶け、体内でなめらかなゼリー状に変化する食物繊維です。これに対して、不溶性食物繊維は水には溶けませんが、保水性が高く、水分を吸収して膨らむ性質があります。

 

食物繊維の役割

食物繊維は体内でさまざまな役割を果たしています。以下では、食物繊維の役割について解説します。

 

腸内環境を整える

食物繊維の役割としてよく知られているのが、腸内環境に対する作用です。食物繊維は腸内環境を整え、便秘の予防をはじめとする整腸効果が期待できます。

食物繊維が適切に摂れていると、腸内の水分を上手にコントロールできるため便がやわらかくなり、また量も適度に増やせて排便がスムーズになります。

さらに食物繊維の中には、腸内で善玉菌のエサになる成分が豊富に含まれるのが特徴です。エサが豊富にあれば、腸内で乳酸菌などの善玉菌が増え、免疫力を高めてさまざまな病気の予防に役立つと考えられています。

 

生活習慣病を予防する

食物繊維は、腸内で脂質やナトリウムを吸着し、体外へ排出する役割を担っています。脂質やナトリウムは、脂質異常症や高血圧といった生活習慣病を引き起こす原因の一部です。食物繊維によってこれらの排出が促されるため、生活習慣病の改善、あるいは予防が期待できると言えます。

また小腸では、食物繊維によって糖の吸収が穏やかになる効果が確認されています。糖の吸収が穏やかになると、空腹感が抑えられて食べ過ぎを防げるメリットがあるでしょう。

 

血中コレステロール値を下げる

食物繊維は、血中コレステロール値を下げる役割をもっています。

血中コレステロール値を左右する大きな要因が、胆汁酸です。胆汁酸は体内でコレステロールから生成される物質で、胆汁の成分となります。そしてこの胆汁酸が、腸内で食べ物の脂肪に作用し、体内の吸収を促進するのです。

食物繊維は、胆汁酸が腸内から便中へ排出されるのをたすけています。胆汁酸が排出されれば、吸収されるコレステロール量が減るため、血中コレステロール値が減少に向かう仕組みです。

 

血糖値の急激な上昇を抑える

食物繊維には、食後の糖の吸収を緩やかにするはたらきがあるため、血糖値の急激な上昇を抑えられます。

血糖値の急上昇は「血糖値スパイク(グルコーススパイク)」とも呼ばれています。近年、腸から一気に糖が吸収されると食後の2時間ほどで血糖値が急上昇し、血管が傷んで動脈硬化が進行することがわかってきました。

腸からの吸収が穏やかであれば、血糖値の急上昇が避けられます。したがって、食物繊維を摂取することが動脈硬化の予防に役立つと言えるのです。

 

食物繊維の種類

先ほども少し触れたとおり、食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。ここでは2種類の食物繊維について、それぞれの役割や特徴を詳しく解説します。

 

水溶性食物繊維

水溶性食物繊維は、水に溶けやすいタイプの食物繊維です。粘性があるため、腸内をゆっくりと移動するのが特徴で、移動の最中に胆汁酸やコレステロールを吸着し、排出をたすけます。

水溶性食物繊維が足りていると、糖の吸収もゆっくりになるため、いわゆる「腹持ちが良い」状態となり、食べ過ぎが防げるでしょう。また発酵するとビフィズス菌など善玉菌のエサとなるため、善玉菌が増え、整腸効果が期待できます。

水溶性食物繊維は、こんにゃく、山芋、海藻類、きのこなどに多く含まれています。

 

不溶性食物繊維

不溶性食物繊維は、水に溶けにくいタイプの食物繊維です。それ自体は水に溶けませんが、水分を吸収し、内部に保つ性質があります。

水分と一緒に老廃物も吸収するのが、不溶性食物繊維の特徴です。吸収した水分や老廃物で便のかさを増し、さらに腸を刺激することでぜん動運動を促して、便秘を解消します。

不溶性食物繊維にも発酵性があり、水溶性食物繊維と同じように、ビフィズス菌など善玉菌のエサになります。しかし水溶性食物繊維に比べれば発酵の度合いは緩やかです。

不溶性食物繊維は、野菜や穀物、小麦ふすま、豆類、ココアなどに多く含まれています。

 

食物繊維の摂取量の目安

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、一日あたりの「目標量」(生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)は、18~64歳の男性で21g以上、女性は18g以上となっています。

自分自身に食物繊維が足りているかどうかは、便の状態や、排便の頻度である程度目算することができます。便が硬すぎる、柔らかすぎる、1日1回の排便がない、便の色が濃すぎる、といったケースでは目安量に達していない可能性があるでしょう。


プラントベースフードで食物繊維はたっぷりと摂れる?

プラントベースの食生活を基準にしている方は、プラントベースフードから一日あたりの目標量の食物繊維を摂れるのかどうかが気になることでしょう。

基本的に食物繊維は、野菜や果物に多く含まれるため、プラントベースの食生活では食物繊維をたくさん、かつ効率よく摂れる可能性があります。

食事では、肉や魚のメインディッシュに野菜類を合わせて食べるのが一般的です。しかし、肉や魚には食物繊維が含まれていないため、一般的な食事であっても食物繊維は野菜から摂取することになります。

プラントベースの食事では、肉や魚の代わりに植物性食品を摂っています。したがって、食物繊維の摂取量は一般的な食事と比べても、さらに増えると考えられるでしょう。

次項では、食物繊維が多い食べ物を紹介します。

 

食物繊維が豊富なプラントベース食材

食物繊維が豊富なプラントベース食材は、たくさんあります。食生活に取り入れれば健康的な生活に役立つでしょう。ここでは、プラントベース中心の食生活をしている方にも、そうでない方にもおすすめしたい、食物繊維を多く含む食べ物の一例を紹介します。

 

いも類(こんにゃくなど)

いも類は、総じて食物繊維が豊富に含まれる食材です。とりわけ、じゃがいもは食物繊維が多く、おすすめしたい食べ物といえます。

いも類における食物繊維の含有量は、以下のとおりです。

食材

食物繊維の量(100gあたり)

こんにゃく(板こんにゃく 生いもこんにゃく)

3g

じゃがいも(皮つき、生)

9.8g

さつまいも(皮つき、生)

2.8g

 

なお、こんにゃくは板こんにゃくのデータを参照しています。こんにゃくいもを加工して板こんにゃくにすると、さつまいもとほぼ同等の量となります。

 

海藻類(ところてん、のり、ひじきなど)

海藻類は食物繊維が豊富に含まれています。ところてんの原料となる「てんぐさ」に食物繊維が多く含まれているほか、のり、ひじきにも食物繊維が多いため、いずれもぜひ取り入れたい食べ物です。

ところてん、焼きのり、ひじきの食物繊維含有量は、以下のとおりです。

食材

食物繊維の量(100gあたり)

ところてん

0.6g

焼きのり

36g

ひじき ほしひじき ゆで

3.7g

 

いずれも、そのまま食べられる状態のものについて掲載しています。焼きのりは1枚約3gで、1枚に含まれる食物繊維量は約1.1gであることも覚えておくと良いでしょう。少量でも効率良く食物繊維を摂取できます。

 

豆類(大豆など)

豆類も、食物繊維が豊富な食材です。とりわけ大豆は加工方法がさまざまで、料理にも取り入れやすいことからおすすめの食材と言えます。

主な大豆製品に含まれる食物繊維の量は、以下のとおりです。

食材

食物繊維の量(100gあたり)

だいず [全粒・全粒製品] 全粒 黄大豆 国産 ゆで

8.5g

納豆

6.7g

おから(生)

11.5g

豆乳(無調整)

0.9g

豆腐(木綿)

1.1g

豆腐(絹ごし)

0.9g



豆乳は、水分が多く含まれていることもあって食物繊維が少なめです。豆腐に含まれる食物繊維は、絹ごし豆腐よりも、木綿豆腐がやや多くなっています。

おからは、現在パウダー状でも販売されており便利に使えるので、こまめに食卓に取り入れてみると良いでしょう。

 

プラントベースでたっぷり食物繊維を摂取しよう

食物繊維は、体の調子を整える栄養素の一つです。代謝を正常に保ち、生活習慣病を予防するなど、重要な効果がいくつも見られます。食物繊維は肉や魚にはほとんど含まれず、植物性食品にたくさん含まれているため、プラントベースの食生活を実践すれば自然と食物繊維をたっぷり摂取できるでしょう。

植物性食品の中にも、食物繊維が特に多いものと、そうでないものとがあります。食物繊維を多く含む食材を意識し、こまめに食卓に取り入れて、健康的な食生活を送りましょう。

 

参考文献

プラントベース食品って何? 消費者庁 参照年月日:2023年12月20日 representation_cms201_210820_01.pdf (caa.go.jp)


食物繊維の必要性と健康 eーヘルスネット 厚生労働省 参照年月日:2023年12月8日 食物繊維の必要性と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)

血糖値スパイクを予防しよう ──糖尿病になる前に対策を! 恩賜財団 済生会 参照年月日:2023年12月12日 血糖値スパイクを予防しよう ──糖尿病になる前に対策を! | 済生会


胆汁酸 ヤクルト中央研究所 参照年月日:2023年12月12日 胆汁酸 | 健康用語の基礎知識 | ヤクルト中央研究所 (yakult.co.jp)


日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 文部科学省