糖質制限ダイエットって効果があるの?安全に行うために知っておきたいこと
ダイエットに取り組んでいる方・身体を鍛えている方は、一度は「糖質制限」という言葉を聞いたことがありませんか?「糖質制限」はSNSなどでも「効果が出やすい」「過度に制限しすぎると危険」など、気になる噂も飛び交っています。
そもそも、糖質制限には効果があるのでしょうか?糖質制限は、短期間に効果が出やすいダイエットですが、むやみに糖質を制限していると、身体に害がないとは言えません。
この記事では、糖質制限の効果と安全に実施するために注意したいポイントについてご紹介します。
糖質制限とは
糖質制限は、主食であるご飯やパン、麺類などの糖質を制限する食事方法で、比較的短期間にダイエットの効果が出やすいのが特徴です。
では、糖質とはどんなもので、どんな働きをしているのでしょう?ここからは、糖質や糖質制限について、基本的なことから解説していきます。
糖質とは
糖質は、主にエネルギーをつくる働きをしていて、人体に欠かせない栄養素です。特に脳の活動は、糖質であるブドウ糖を主なエネルギー源としています。
小麦、米などの穀物、果物、芋類などには、糖質が多く含まれています。詳しくは、糖質ってなに?その働きと一日の摂取量、身体に与える影響を学ぼうで解説していますので、そちらもご参照ください。
なぜ糖質を制限するとダイエットできる?
そもそも糖質を制限すると、ダイエットできるのはなぜでしょうか?これには血糖値が大きく関わっています。
誰でも食後は一時的に血糖値が高くなりますが、通常であればインスリンが働き、食後約2時間以内には正常値に戻ります。
糖質が多い食事をとっていると、インスリンの分泌量が追いつかず食事をしてから2時間たっても血糖値が下がらない場合があります。この状態を「食後高血糖」と呼びます。
インスリンは、余分なブドウ糖を中性脂肪に変えますが、食後高血糖の状態ではインスリンが大量に分泌され、中性脂肪が大量につくられてしまうのです。
中性脂肪は、私たちにとって重要なエネルギー源ですが、使いきれないと脂肪細胞に蓄積され肥満につながっていきます。
糖質を制限すると血糖値が上がりにくくなり、「食後高血糖」を防ぐことができます。これによりインスリンの分泌量が減り、中性脂肪がつくられにくくなるのです。
また、血糖値が下がっている状態では、体を動かすエネルギー源が血液中のブドウ糖だけでは足りません。そこで、脂肪がエネルギーとして利用されます。
これらの理由から、糖質制限をおこなうと、肥満になりにくくダイエットにつながると言われています。
糖質制限の実施方法
糖質制限は、以前はほとんど糖質を摂らない極端な方法が推奨されていました。
しかし、その方法には、命に関わるリスクさえあるとされ、現在は「ロカボダイエット」と言われる、ゆるやかな糖質制限が注目を集めています。主なルールは以下の通りです。
・1食当たりの糖質量を20g以上40g以下にし、間食として10gの糖質を摂取する
・1日の糖質が130gを超えないようにする
・糖質は食事の最後にとる
・たんぱく質と食物繊維は過不足しないように適正量を摂取する気を付ける
ちなみに糖質30gを含む主食の量は以下の通りです。これら主食と、調理に使われる砂糖や芋、果物などに含まれる糖質などが、糖質制限の対象になります。
糖質30g相当の量
ご飯(穀類/こめ/[水稲めし]/精白米/うるち米) |
ご飯茶碗半分(約75g) |
穀類/こむぎ/[うどん・そうめん類]/うどん/ゆで | 3/4玉程度(1玉:200g) |
穀類/こむぎ/[マカロニ・スパゲッティ類]/マカロニ・スパゲッティ/乾 |
1/2束程度(1束:100g) |
穀類/こむぎ/[うどん・そうめん類]/そうめん・ひやむぎ/乾 |
1束程度(1束:50g) |
糖質制限が人気の理由
近年スーパーやコンビニで「糖質オフ」と書かれている商品をみかけることがあり、商品数も少しずつ増えているようです。
では糖質を気にしている人は、どうして「糖質オフ」を選ぶのでしょうか?
糖質制限が、ダイエット方法として選ばれるのには、一般的に以下のような理由があるようです。
・短期間で効果が出やすいので、やりがいがある
・空腹を感じにくいので、我慢が少ない
・様々な食材を食べられるので、ストレスがたまりにくい
・生活習慣病の予防や改善に効果的なので、中高年にも向いている
・食後眠くなりにくく、仕事の能率があがる
SNSで糖質制限ダイエットをしている方のコメントを見ると、糖質制限は結果が出やすいことからやりがいがあり、ストレスがたまりにくい方法として、世代を問わず人気のようです。
糖質制限を実施する際に注意したいこと
一方、糖質制限にはデメリットもあります。せっかく糖質制限をおこなうなら、リスクも理解して安全に実施したいものです。ここからは糖質制限をする際におきやすい不調と、その対策をご紹介します。
体調を崩す
米ハーバード大学などが、スウェーデンの女性4万3396人の食生活と病気の発症を16年間にわたって追跡調査した結果では、糖質制限が心筋梗塞や脳卒中の危険性を高める傾向が認められました。
糖質制限では、糖質を減らした分だけ脂質やたんぱく質が多くなりがちです。そうなると、血液中の脂質が増えすぎたり腎臓への負担が高まったりするので、心筋梗塞や脳卒中が増えるのではないかと考えられています。
このリスクを防ぐには糖質制限を徐々に開始し体を慣らすことと、糖質を控えすぎず、ある程度の糖質を摂取しながら、脂質とたんぱく質が過剰摂取にならないようにする必要があります。
またダイエット中は自分の体調の変化に注意して、血糖値や脂質、尿素窒素(BUN)などの数値の変化をチェックできるとよいでしょう。
倦怠感がありイライラする
糖質制限を頑張りすぎると、倦怠感やイライラを覚えることがあります。脳は、エネルギーとして主にブドウ糖を利用しています。そのため、糖質を制限しすぎると、脳が低血糖になり、倦怠感を覚えたり、イライラしたりするのです。
倦怠感やイライラを防ぐには、糖質を制限しすぎないことが大切です。糖質制限中であっても、普段からある程度の糖質を摂取するようにしましょう。
また、急激に糖質制限を始めると低血糖症になりやすいので、糖質制限は徐々に開始して、体調を見ながら1日の目標量に近づけたほうがいいでしょう。
頭痛がおきる
糖質制限で頭痛がおきるのは、前述した脳のエネルギー不足と脱水が原因です。
糖は水分を保持するためにも使われています。糖質制限をすると血糖値が下がり、体内の水分が減ってしまいます。
脳がエネルギー不足となると、体は脳にブトウ糖を運ぼうとします。しかし、脱水状態では、うまく血流にのって糖分が運ばれません。このため、血流を増やそうとして脳の血管が拡張され頭痛を感じるのです。
糖質制限をしているとき頭痛を感じるようなら、少しやり過ぎです。水分摂取をこころがけて、すこし糖質制限をゆるめてみましょう。
便秘になる
穀物や芋類など糖分の多い食品には、食物繊維も多く含まれています。
食物繊維は水分を保持して膨らみ、食物を腸の中で移動しやすくする働きをしていますが、糖質を制限することで食物繊維の摂取も減りやすくなってしまいます。
その結果、水分不足で食物の腸内移動が遅くなり、便秘になりやすくなるのです。
また、過度な糖質制限により腸内環境が悪化することも一因です。食物繊維は乳酸菌などの善玉菌増殖を促進する働きもしているので、食物繊維の不足により悪玉菌が増殖しやすくなります。
加えて、糖質制限のためにたんぱく質の摂取量が増えることで、消化しきれないたんぱく質をエサとしてウェルシュ菌などの悪玉菌が増殖しやすくなります。
このように、腸内環境が悪玉菌優勢になると善玉菌の働きが弱くなり、より便秘につながりやすくなってしまうのです。
そのため、糖質制限をしている間は、水分を多く摂りつつ、糖質が少なく食物繊維が多いキノコや海藻などを積極的に取り入れるとよいでしょう。
ストレスがたまる
糖を中心とした甘いものを食べると、心理学的に多幸感を感じることがわかっています。
また、ストレスがたまると、衝動がおさえにくくなり、ドカ食いをしやすくなります。
そのためにも急に糖質を制限しすぎない、低糖質の食品などをうまく利用して我慢しすぎないことが大切になります。
糖質制限を安全に行うために知っておきたいこと
このように糖質制限にはリスクがあり、安全に行うために知っておきたいポイントがあります。ここからは、糖質制限をするとき気をつけたいことを、まとめて紹介します。
糖質を減らしすぎない
糖質をまったくとらずにダイエットを行うとリバウンドを起こしやすくなりますし、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなります。
糖質を制限する時は、減らしすぎにも気をつけてください。目安は1食20~40g程度ですが、ごはんでは茶碗半分程度になります。身体全体を制御する脳を正常に保つためには、ある程度の糖質を摂取しなければなりませんので注意してください。
糖質制限はリバウンドを防ぐためにも「徐々に始めて徐々に終える」と覚えておきましょう。
たんぱく質と脂質は食べる
糖質制限では、カロリーを減らしすぎないようにしましょう。糖質制限ダイエットでは、糖質でとれないカロリーはたんぱく質と脂質で補います。
ただし、たんぱく質や脂質が多い食事は、腸内の悪玉菌が増える原因にもなります。糖質オフを実施する間は、不規則な生活・ストレスなど、悪玉菌を増やすリスクを避けたほうがいいでしょう。
逆に善玉菌を増やす食生活もおすすめです。ヨーグルト・乳酸菌飲料・納豆・漬物など、ビフィズス菌や乳酸菌を含む食品や、善玉菌を増やす作用のあるオリゴ糖や食物繊維を含む野菜や果物・豆などを食べるなど、自分が続けられる方法を習慣にしてください。
脂質が多すぎるとカロリーの取り過ぎにつながりやすくなります。カロリーオーバーすれば、ダイエット効果は期待できません。
たんぱく質については、過剰摂取は腎臓機能に影響を及ぼすとも言われます。
複数の研究結果からは、健康な人であれば1日のエネルギー摂取量の35%以内であれば、腎機能を低下させることはないと結論がでていますが、気になることがあれば、必ずかかりつけ医に相談してから糖質制限を始めましょう。
食物繊維を多めにとる
食物繊維を多くとると便通にも良い影響を与えてくれます。
それだけでなく、食物繊維をほとんど摂取しない場合に比べて、20g/日程度摂取していた場合では、心筋梗塞の発症率が15%ほど低かったという報告もあり、糖質制限のリスクを下げる働きも期待されます。
糖質が少なく食物繊維が多い食材は、葉物野菜やきのこ、海藻など。毎日の食事に積極的に取り入れましょう。
水分を多めにとる
糖質制限をしていると、脱水になりやすくなります。喉が渇く前に水分を摂取する習慣をつけ、水分を多めにとりましょう。
厚生労働省ではこまめな水分補給習慣を定着させることを目的として「健康のため水を飲もう」推進運動がおこなわれています。
脱水による健康障害や重大事故などの予防には、「寝る前、起床時、スポーツ中及びその前後、入浴の前後、そしてのどが渇く前」に水分補給をし、「いつもより、コップ2杯」多めに水をとることを推奨しています。
我慢しすぎない
ダイエットをはじめると、頑張りたくなるものです。でも、糖質制限では我慢しすぎず、糖質を制限しすぎないことが大切になります。
糖質制限をしているときは、頑張り過ぎていないかを自分自身に問いかけながら進めましょう。
血糖値があがりにくい食品を利用する、糖質以外の食品をほどよく摂取する、ときには好きなものを食べるチートデーを設けるなどして、ストレスをためないことが大切です。
糖質制限ダイエットを助けてくれる食品
糖質制限は、食後の血糖値の急上昇を防ぎ、中性脂肪の合成をおさえる方法です。ここからは、糖質制限を助けてくれる、血糖値をあげにくい食品を紹介します。血糖値があがりにくい食品なら、食べることも楽しめるから、糖質制限を続けやすくなります。ぜひ、利用してみてください。
血糖値があがりにくい糖質
糖質の中にも、血糖値があがりにくいとされているものがあります。
たとえば、てんさい糖やココナッツシュガーは、白砂糖よりもGI値が低く、血糖値が上がりにくい甘味料です。ミネラルをほとんど含まない上白糖とは違いミネラルが含まれていて、腸内環境を整えてくれる働きもあります。
また、オリゴ糖も血糖値が上がりにくい糖質の1つです。フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などの種類があり、腸内細菌を増やす効果があります。特定保健用食品(トクホ)の関与成分としても有名です。
そのほか、糖アルコールと呼ばれるソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールなどもあります。これらの糖アルコールやオリゴ糖は、食べ過ぎるとお腹がゆるくなりやすいので注意してください。
低GI食品
その食品を食べたら、どれぐらい血糖値があがるのかを示す数値が、GI値(Glycemic index)です。摂取2時間までの血液中の糖濃度を計った数値をもとにした指標で、GI値が70以上であれば高GI食品、56~69の間であれば中GI食品、55以下の食品を低GI食品と定義されます。
低GI食品なら、血糖値があがりにくく太りにくいと言え、糖質制限をおこなう人の強い味方になってくれるでしょう。
GI値は、カロリーと相関はありません。同じ麺類でも、そばは低GI、そうめんは高GIというように、それぞれ値が違います。
低GI食品ならば、血糖値の上昇がおだやかに。上手に取り入れれば、よりストレスのない糖質制限が実現可能です。
糖質オフ食品
糖質オフとは、一般的に食品や飲料に含まれる糖質の量が通常よりも低いことを指します。
実は糖質オフには明確な定義がないのですが、似た言葉に「糖類オフ」があります。
食品表示基準に基づく栄養成分表示によると「糖類オフ」と言えるのは、比較対象食品に対して糖類の量が食品100gあたり5g以上低減され、かつその低減された割合が25%以上の相対差がある場合とされています。
また、似たような言葉に糖類ゼロがあります。
糖類ゼロとは、食品や飲料に含まれる糖類の量が非常に少なく、ほぼゼロに近いことを指します。食品表示基準では、糖類が0.5g未満の場合に「糖類ゼロ」と表示することができます。
これら「糖類ゼロ」「糖類オフ」商品は、血糖値を上げにくい食品だといえます。
糖質カット食品を活用してストレスのたまりにくい糖質制限を
糖質制限は食後血糖値の急上昇を防ぎ、太りにくい食べ方をする方法です。人気のダイエット方法ですが、単に糖質を制限するだけでは、リスクがあります。
糖質を制限しすぎない、カロリーは確保する、食物繊維をとる、水分をとるなど、いくつかの守っておきたいポイントがあります。
ストレスをためないのも大切なポイントです。血糖値があがりにくい食材を、上手に選んで食べれば、糖質制限が続けやすく結果にもつながりやすくなります。
「ああ!今日も食べてしまった!」等と罪の意識を持つより、糖質カット食品を使ってストレスなく糖質制限をしてみませんか?
◎記事監修
宮崎郁子
東京医科大学医学部医学科卒業後、東京医科大学病院 消化器内科、東京医科大学病院 内視鏡センター助教、牧野記念病院 内科を経て、2015年より東京国際クリニック/医科 副院長を務める。
医学博士、総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、食生活アドバイザー。
参考文献
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適正な糖質摂取についての考察 北里研究所病院 糖尿病センター 山田 悟 参照年月日:2023年12月15日 GS17-36J.pdf (toukastress.jp)
摂取栄養素と高血糖 1.食事の糖質比率に対する考え方と課題 篁俊成 参照年月日:2023年12月15日 ja (jst.go.jp)
特定保健指導の対象とならない非肥満の脳・心血管疾患危険因子 保有者に対 する生活習慣の改善指導 厚生労働省 参照年月日:2023年12月15日 特定保健指導の対象とならない非肥満の脳・心血管疾患危険因子 保有者に対 する生活習慣の改善指導
高血圧治療ガイドライン2019 日本高血圧学会 参照年月日:2023年12月15日 JSH2019_hp.pdf (jpnsh.jp)
糖質制限完全マニュアル 血糖値が安定すればやせられる 山田悟 文藝春秋BOOKS 参照年月日:2023年12月29日
「健康のため水を飲もう」推進運動 厚生労働省 参照年月日:2023年12月15日 「健康のため水を飲もう」推進運動 (mhlw.go.jp)