五葷(ごくん)とは?オリエンタルヴィーガンの実践方法を知ろう

ヴィーガンの食事では、「五葷(ごくん)」に数えられる食材があります。オリエンタルヴィーガンと呼ばれる方たちは五葷を食べないことで知られていますが、では五葷とは何のことで、なぜ五葷を食べない方がいるのでしょうか。

この記事では、五葷とは何かを紐解くとともに、オリエンタルヴィーガンの方が五葷を食べない理由を解説します。また、五葷を食べずにおいしい食事を楽しむ工夫もご紹介するので、参考にしてください。

 

五葷とは? 五葷に該当する野菜をチェック

五葷とは、ネギ類を中心とした香りの強い野菜のことです。具体的には、ネギ、玉ねぎ、ニラ、らっきょう、にんにく、あさつき、野蒜などがあります。

「五葷」というと、五種類しかないように思われますが、実際には上述したように、五種類に絞られているわけではなく、国や地域・宗教によって定義が違うこともあります。

例えば仏教では、にんにく、野蒜、ニラ、ネギ(玉ねぎ)、らっきょうを五葷とし、道教ではニラ、らっきょう、にんにく、アブラナ、コリアンダーを五葷として定義しています。しかし、これらもやはり諸説あると考えられます。

 

五葷を食べない「オリエンタルヴィーガン」とは

五葷を食べないヴィーガンは、特にオリエンタルヴィーガンと呼ばれています。

元々、五葷は仏教で禁じられたものであったことから、宗教上の理由で五葷を食べない方は東洋に多く、これが「オリエンタル」の名前を冠する理由です。五葷を食べない食事は「禁葷食(きんくんしょく)」とも呼ばれています。

 

とは言え、仏教徒の中でも、五葷に対する姿勢は必ずしも一定ではありません。僧侶や、厳しい戒律を守る信仰をもっている地域では現在でも五葷を食べませんが、仏教徒なら全員食べない、というわけでもありません。

また仏教の中では、宗派や時代によっても五葷に対する考え方が違います。とりわけ戒律の厳しい禅宗では、五葷に対する規制が厳しく行われてきた歴史があり、現在でも禅宗の寺院などでは「禁葷酒」と書かれた石碑がみられます。

 

オリエンタルヴィーガンが五葷を食べないのはなぜ?

 

オリエンタルヴィーガンは、なぜ五葷を食べないのでしょうか。オリエンタルヴィーガンが五葷を食べない理由は、仏教で五葷が禁じられた理由にも通じています。宗教上あるいは個人の思想として、五葷が避けられる理由を紹介します。

 

香りが強く仏道修行の妨げとなるから

五葷はいずれの野菜も、香りが強く、味も刺激的だという特徴があります。ネギ類に独特のインパクトのある味は「おいしさ」でもありますが、仏道修行の妨げになるとも考えられました。

仏教の修行とは、すなわち欲望を消し去る修行です。しかし五葷は刺激が強いので、心が乱されやすくなってしまいます。五葷を食べると怒りや欲望が高まる、あるいは、良い香りのために肉や魚が食べたくなるとされました。

このように、心の乱れや欲望が誘発されるのを防ぐために、修行の一環として五葷を避けることが古くから行われていたと考えられます。

 

五葷が必要ないから

オリエンタルヴィーガンが五葷を食べないのは、突き詰めれば「五葷が必要ないから」であるとも言えます。

香りの強い五葷は、肉や魚の臭み消しとして調理に使われてきました。いわば、肉や魚とセットの食材という側面があるのです。その点、仏教徒やベジタリアンは、宗教的あるいは思想的な理由から肉や魚を食べないため、五葷を料理に使う必要性がありません。

刺激的だから禁じるという側面もありつつ、肉や魚を食べないためにあえて五葷を必要としていないという理由も存在しています。

 

刺激が強すぎて心身のバランスが崩れるから

五葷を食べないのは、刺激が強すぎて心身のバランスを崩しやすくなってしまうためともいわれています。

中国の五行説や、インドのアーユルヴェーダでは、五葷が人の気や内臓を害すると考えられてきました。東洋医学の考え方では、にんにくが心臓を、ニラが肝臓を、らっきょうが脾臓を、ねぎは腎臓を、あさつきは肺臓をそれぞれ刺激し、痛めるとされます。

五葷はそれぞれが食材として有能で、食材の臭み消しができたり、体内への栄養吸収を促進したりする作用があるため、一概に体に悪いとは言えません。しかし動物性タンパク質を食べない場合には、必ずしもプラスとはならないこともあります。

 

例えば、五葷の香りの元であるアリシンという成分は、動物性タンパク質の中のビタミンB₁と反応し、体内への吸収率を高めるものです。

ただし動物性タンパク質を食べない場合は、アリシンが反応せず体内に多く残り、体臭や口臭の原因になってしまいます。こうしたことが、「心身のバランスを崩す」という言い伝えになったと考えられるでしょう。

 

五葷を食べるヴィーガンもいる

 

ヴィーガンなら全員、五葷を食べないというわけではなく、五葷を食べるヴィーガンもいます。

とりわけ五葷は仏教と深いつながりのある考え方で、食べるか食べないかの判断は信仰によるところも大きいと言えます。僧侶や、厳しい戒律を守りたい仏教徒でない限り、五葷を食べるかどうかは個人の考え方次第です。

 

五葷を食べない場合に実践したい食事の工夫

五葷は非常に香り高く、食事の際に食べ応えを感じさせる役割を果たすため、五葷をまったく食べないと、食事のメニューに物足りないと感じることがあるかもしれません。

ここでは、五葷を使わずに満足感のある食事をつくる工夫を紹介します。

 

しっかりとだしを取る

まず気に掛けたいのは、しっかりとだしを取るということです。食材から出るだしを使って食事を作るようにすると、うまみが強くなります。五葷の強い香りや味がなくても、しっかりと濃いめの味に感じられるようになるでしょう。

ヴィーガンやプラントベースの場合、主に野菜だしや昆布だし、キノコなどを使います。野菜ブイヨンなどを使用するのもおすすめです。市販の野菜ブイヨンの中には、ヴィーガン料理に使えると明記してあるものもありますが、五葷が含まれているかどうかは各商品の成分を確認することをおすすめします。

 

素材の味を感じられる調理をする

調味料の味を濃くしすぎず、素材の味を一つひとつ大切にした調理を心掛けると、五葷を使わなくても風味豊かな料理がつくれます。食べる時も、ゆっくりと味を感じられるように食べると良いでしょう。

素材の味を感じられるかどうか、ゆっくりと食べられるかどうかは、慣れでもあります。とりわけ調味料の濃い味に慣れきっていると、味つけを薄くしても素材の味が感じられないこともあるでしょう。味が薄いからといって濃い味に戻さず、素材やだしの味をかみ分けることに慣れるまで、薄味で食べ続けるのがおすすめです。

 

スパイスを効かせる

五葷を使わない食事では、スパイスを効かせてみるのも一つの方法です。スパイスも香りの強い食材ですが、五葷には含まれていないことが多いため、禁葷食(きんくんしょく)ではスパイスを使っても問題はありません。

五葷の代用として使えるスパイスには、以下のようなものがあります。

  • クミン
  • ターメリック
  • ナツメグ
  • ホワイトペッパー
  • ローズマリー
  • レモンタイム
  • ミント
  • ディル

これらの他に、コリアンダーも宗教上の理由で禁じられていない場合は五葷に数えないことも多く、オリエンタルヴィーガンのスパイスとしてよく用いられています。コリアンダーを五葷に含めるのは、先ほども触れたとおり道教の教義です。いずれのスパイスも、自分自身の信仰において避けるべき食材をよく調べてから使うことをおすすめします。

 

プラントベースの食事では五葷を意識してみるのもおすすめ

五葷は香りや刺激が強く、仏教では修行の妨げとして禁じられてきた食材です。その他にも五葷を禁じてきた宗教があります。しかし僧侶など、厳しい戒律を守る立場でない場合は、必ずしも五葷を食べないわけではありません。五葷を食べるか、食べないかは、最終的に自分自身の信仰や判断に基づいていると言えます。

プラントベースの食事を摂る際は、五葷を抜かなくてはならないという決まりはありません。しかし五葷の成分は肉や魚の臭み消しとして調理に使われる目的があったため、動物性タンパク質を食べない方は五葷をあまり必要としない側面もあります。

動物性タンパク質を摂らないという点で、仏教の思想とプラントベースの考え方はよく似ています。したがってプラントベースの食事を摂る場合は、五葷に気をつけてみるのも良いでしょう。

 

 

参考文献

オリエンタルヴィーガンとは?野菜の中でも「五葷」を避ける理由 ハッピーキヌア 参照年月日:2023年12月18日 オリエンタルヴィーガンとは?野菜の中でも「五葷」を避ける理由|ヴィーガン情報総合|ハッピーキヌア|日本最大級のヴィーガン情報メディア (happy-quinoa.com)