
カルシウムをプラントベースフードで摂るには?おすすめの食品と食べ方をご紹介
カルシウムは牛乳や、小魚に多く含まれているというイメージが強く、プラントベースの食品からどの程度摂れるのか心配と考える方も多いでしょう。本記事では、プラントベースの食事とカルシウムとの関係を、多方面からご紹介します。
カルシウムの役割や、摂取にあたっての注意点なども解説するので、参考にしてください。
プラントベースとは?

プラントベースとは、食生活において植物由来の食材を中心に使用し、動物由来の食材をできるだけ減らす、という考え方です。
過去には、プラントベースの食生活を送る方の多くが宗教上の理由から動物性食材を避けてきました。また生命に対する考え方の一つとしてプラントベースの食事を選んできた方もいるでしょう。現在では、これらの理由に加えて、環境問題への対応を目的にプラントベースを実践する方が増えています。
カルシウムとは?

プラントベース食材とカルシウムとの関係を知る前に、カルシウムについて簡単に知っておきましょう。以下では、「カルシウムとは何か」を解説します。
カルシウムの概要
カルシウムは、生命にとって欠かせない栄養素である「ミネラル」の一種です。ミネラルには、カルシウムの他にリンや亜鉛、カリウムなどがあります。カルシウムは人体において、他のミネラルと比べると最も多く、成人の場合は体重の約1%~2%を占めています。
カルシウムが骨や歯の成分であることはよく知られているとおりです。そのため、カルシウムが不足すると、骨粗鬆症などの疾患の原因となることがあります。
またカルシウムの一部は、血液や筋肉、神経の中に存在しているのも特徴です。詳細は後述しますが、心筋の収縮作用、神経興奮の抑制、血液凝固作用など、重要な役割を担っています。
なおカルシウムの推奨量について、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人1人1日当たりの推奨量を男性で700mgから800mg、女性で600~650mgと設定しています。
カルシウムの役割
それでは改めて、カルシウムの役割について詳しく見てみましょう。
健康的な骨を形成する
カルシウムは骨の主原料となるミネラルです。体内のカルシウムは、骨芽細胞という骨をつくる細胞のはたらきにより、集合して固い骨を形成します。カルシウムについて「白い・固い」というイメージをもっている方も多いのではないでしょうか。
ただし、骨は一旦形成されても必要に応じて体内で吸収され、他の用途に使われます。そもそも体内では破骨細胞という骨を壊す細胞も常に働いており、古い骨を破壊することで、骨の新陳代謝が行われているのです。したがって、破壊された分の骨を補うためにも継続的なカルシウム摂取が必要となります。
男性では50代以降、女性は閉経後になると、骨の形成スピードが緩やかになる傾向があります。カルシウムが不足すると、より骨が形成しづらくなるため、積極的なカルシウム摂取を心掛けましょう。
血液の凝固を補助する
カルシウムは血液の凝固作用をもっています。ケガなどで血が出た時に自然と血を止める「止血」のために、カルシウムが必要なのです。
止血の際は、血液が一旦ゼリー状にゲル化します。これはカルシウムと、他のたんぱく質などが反応して起こる作用です。カルシウムがないと、ちょっとしたケガの際も血液を自然に固めることができなくなってしまいます。カルシウムは、安全に日常を送るためになくてはならない栄養素と言えるでしょう。
筋肉や心筋の収縮作用を補助する
カルシウムには、筋肉の収縮作用を補助する役割があります。とりわけ心筋、すなわち心臓の筋肉が正常に収縮するためには、カルシウムが必要です。
心臓の働きにおいては、心臓の細胞内でカルシウムイオンの濃度が大きく高まることによって、心筋が大きく収縮し、血液を送り出しています。カルシウムが不足するとこの作用が妨げられ、不整脈になる可能性があるのです。カルシウムは私たちの生命維持のために欠かせないミネラルであることが分かります。
細胞の分裂を補助する
骨に限らず、私たちの体は細胞の分裂によって新陳代謝を繰り返していますが、カルシウムは、このような正常な細胞分裂を補助する働きをもっています。
最新の研究では、カルシウムイオンが不足することによって細胞分裂に支障を来す可能性が指摘されています。カルシウムは細胞分裂の際に、染色体の凝縮や整列、あるいは細胞分裂そのものにかかる時間などに影響していることが分かってきているのです。カルシウムの摂取は、代謝をできるだけ正常に保つためにも重要と言えます。
神経の興奮を抑制する
カルシウムは、脳の中では神経伝達物質として働いています。神経伝達物質とは、細胞とニューロンとの間で信号をやりとりするための物質です。脳神経の中でカルシウムが担う重要な役割は1つではなく、ヒトが肉体を無意識に制御するためのプログラムには不可欠の存在です。
また、カルシウムは精神機能との関連があることが示唆されていますが、通常では血中カルシウム濃度が一定に保たれる働きがあるため、すぐに影響することはないでしょう。
カルシウムの種類

カルシウムには2種類があります。それぞれについて解説します。
貯蔵カルシウム
貯蔵カルシウムは、骨や歯の成分として体内に存在しているカルシウムです。体内のカルシウムのうち、約99%を占めています。
貯蔵カルシウムの役割は、骨を強くしたり、固くしたりすることです。しかし体内の他の場所で必要とされる場合は、必要に応じて溶かされ、血中に流れ出して消費されます。骨あるいは歯として役に立つ存在である一方、他の場所で使用する可能性を見越した貯蔵分でもあることが特徴です。
機能カルシウム
機能カルシウムは、生命活動の維持に使われるカルシウムです。体内のカルシウムのうちのたった1%に過ぎませんが、先ほどカルシウムの役割の項で触れたとおり、私たちが生きていく上では必要不可欠な役割を担っています。
カルシウムの機能を改めてまとめると、以下のとおりです。
- 血液凝固の補助
- 筋肉、心筋の収縮
- 細胞分裂の補助
- 脳内での神経伝達
なお体内のカルシウムは、骨や歯としての貯蔵よりも機能カルシウムとしての消費が優先されます。カルシウムの摂取量が消費量よりも少なかった場合は、骨や歯が溶かされ使われてしまうため、不足のないよう摂取することが大切です。
カルシウムは摂りすぎに注意が必要

カルシウムは、過剰摂取に注意が必要な物質です。カルシウムを摂りすぎると、高カルシウム尿症や高カルシウム血症、結石、鉄・亜鉛の吸収障害、便秘などのデメリットが考えられます。
カルシウム過剰摂取による症状は、食欲不振、嘔吐、腹痛、便秘、多尿から、錯乱、昏睡までさまざまです。程度によって重篤な体調不良を引き起こす可能性があるため、目安量を超えての摂取は控えましょう。
良質なカルシウムを含むプラントベース食材

プラントベースの生活をするには、良質なカルシウムを含む食材を知っておくと便利です。ここでは、カルシウム摂取におすすめのプラントベース食材や、食べ方のアイデアをご紹介します。
緑葉野菜
カルシウムを豊富に含む緑葉野菜には、ブロッコリー、芽キャベツ、ケールなどがあります。それぞれのカルシウム含有量は以下のとおりです。
食材 |
カルシウム含有量(100gあたり) |
ブロッコリー(生) |
50mg |
芽キャベツ(生) |
37mg |
ケール(生) |
220mg |
上記はいずれも生の状態での計測値です。調理の際、ブロッコリーはカルシウムの減少量が少ない電子レンジ調理が良いでしょう。芽キャベツは、ゆでてもカルシウムがさほど減少しない食材です。
ケールはスムージーなどにするほか、サラダ、炒め物でもおいしくいただけます。
豆類
カルシウムを多く含む豆類の中には、いんげん豆、ひよこ豆、花豆、大豆などさまざまな種類があります。それぞれのカルシウム含有量は以下のとおりです。
食材 |
カルシウム含有量(100gあたり) |
いんげん豆(ゆで) |
62mg |
さやいんげん(ゆで) |
53mg |
ひよこ豆(ゆで) |
45mg |
花豆(ゆで) |
28mg |
だいず [全粒・全粒製品] 全粒 黄大豆 国産 ゆで |
79mg |
いんげん豆や、さやいんげんは、それ自体を煮物にしたり、味噌汁に入れたりして食べますが、肉じゃがなどの煮物に彩りとして載せてもおしゃれです。
ひよこ豆や花豆は、煮豆として食べることが多く、ひよこ豆はカレーに入れると豆のカレーとして楽しめます。
サラダには、ゆで大豆を入れるとカルシウム摂取に効果的です。また豆腐など大豆製品にも、多くのカルシウムが含まれているため、こまめに食べることをおすすめします。
ごま
ごまには、多くのカルシウムが含まれています。ごまを使った加工品もいくつかありますが、全てにカルシウムが含まれているとは限りません。ごまや、関連商品のカルシウム含有量は以下のとおりです。
食材 |
カルシウム含有量(100gあたり) |
いりごま |
1200mg |
ごま豆腐 |
6mg |
ごま油 |
1mg |
いりごまのカルシウム含有量が非常に多いことが分かりますが、こちらは100gあたりの数値です。ごまは、小さじ半分で約1gになるので、目安にしてください。ごま豆腐、ごま油は、ごまを使用した食材といってもカルシウム量が目立って多いわけではありません。他の食材と組み合わせて工夫しましょう。
また、ごまを食べる場合は、いりごまのままで食べるよりも、すりごまにして食べるほうが吸収が良くなります。普段の食事でも、すりごまを上にふりかけて食べると、ごまの風味を楽しみながらカルシウムが摂れるでしょう。
プラントベースフードでもカルシウムは充分摂取できる

カルシウムは生きるために必要不可欠な栄養素です。多すぎても問題があるものの、少なすぎれば骨粗鬆症やその他の重篤な病気になる可能性もあるため、目安量までしっかりと摂取するように心掛けましょう。
またここまでに見てきたように、プラントベースフードの中にもカルシウムを豊富に含むものはたくさんあります。カルシウムを多く含むプラントベースフードを組み合わせ、適量のカルシウムを摂って、健康的な生活を目指してください。
参考文献
公益社団法人 福岡県薬剤師会 参照年月日:2023年12月20日
ストレス関連精神疾患におけるカルシウムシグナリングの役割 (jst.go.jp)
神経細胞におけるカルシウム・シグナル伝達 | アブカム abcam 参照年月日:2023年12月12日
神経細胞におけるカルシウム・シグナル伝達 | アブカム (abcam.co.jp)
e-ヘルスネット 厚生労働省 参照年月日:2023年12月12日
カルシウム | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 文部科学省