フィトケミカルとは何ですか?効果や含有する食品など
フィトケミカルと言う言葉を聞いたことはあるものの、意味を知らない方も多いのではないでしょうか?
その疑問を解消するため本記事ではフィトケミカルの効果や種類、含有食品、食品別の抗酸化力の強さなどについて解説しています。フィトケミカルをいつもの食事に取り入れるコツもご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
フィトケミカル(ファイトケミカル)とは何ですか?五大栄養素ではない
フィトケミカルはファイトケミカルとも呼ばれ、野菜や果物などの植物に含まれる化学物質で健康維持や増進が期待できるものを指します。フィトは植物、ケミカルは化学物質と言う意味です。
フィトケミカルの代表的なものには、トマトに含まれるリコピンやブルーベリーのアントシアニン、緑茶のカテキンなどがあります。五大栄養素である炭水化物や脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルとは異なりますが、フィトケミカルは体に良い働きを持つことが知られ、積極的に摂りたい栄養成分です。
また植物は紫外線や昆虫などの外的要因から身を守るためにフィトケミカルをみずから作り出していますが、ヒトは体内で作れません。そのため、フィトケミカルを含む植物を食べることで摂取する必要があります。
フィトケミカル(ファイトケミカル)の効果
フィトケミカルに期待される主な効果は、抗酸化作用です。抗酸化作用とは活性酸素の産生を抑制し、酸化を防ぐ働きのことを指します。
私たちが呼吸によって取り込んだ酸素の一部は、通常よりも活性化された活性酸素に変化します。活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能としての役割を担っていますが、過剰に産生されると細胞を傷つけ、体にとって良くない影響を与える物質です。
フィトケミカルは活性酸素を除去する抗酸化作用を持つことが明らかになっていて、フィトケミカルを摂取して活性酸素による酸化を防ぎ、老化や様々な病気を予防できるのではないかと期待されています。
抗酸化作用以外の効果もある
フィトケミカルは、抗酸化作用の他にも様々な効果を持つことが分かっています。例えば、大豆に含まれるイソフラボンは女性ホルモンに似た作用があると言われているフィトケミカルです。
温州ミカンには骨粗鬆症リスクを低減させる作用が報告されているβクリプトキサンチンが含まれていたり、タマネギのケルセチンやイネ科の植物には抗炎症作用を持つとの報告があるポリフェノールの一種、フェルラ酸が含まれていたりします。
フィトケミカル(ファイトケミカル)の種類と含有食品
フィトケミカルには多様な種類があり、中でも良く知られているのはポリフェノール系やカロテノイド系、イオウ化合物系です。その他にもレモンのリモネンに代表されるテルペン系、きくらげやなめこ、しめじに含まれるβグルカンに代表されるグルカン系などもあります。
ここからは、身近なフィトケミカルであるポリフェノール系とカロテノイド系、イオウ化合物系について詳しくご紹介していきます。
ポリフェノール系
ポリフェノールは抗酸化物質の一つで、水に溶けやすく体内で吸収されやすいと言う特徴を持っています。食品中での役割は苦味や渋味などの味覚、色味などの視覚など嗜好性を良くしたり体を調節したりすることです。ポリフェノール系に分類されるフィトケミカルと主な食品名は、以下の通りです。- アントシアニン:ブルーベリー・赤ワイン
- イソフラボン・サポニン:大豆
- セサミノール:ゴマ
- ルチン:そば
- カテキン:緑茶
- タンニン:紅茶、ウーロン茶
- クロロゲン酸:コーヒー
カロテノイド系
カロテノイドは赤色や黄色の色素成分からなる抗酸化物質で、油に溶けやすい特徴です。カロテノイド系に分類されるフィトケミカルと主な食品を、以下でご紹介します。- リコピン:トマト・すいか
- β-クリプトキサンチン:温州ミカン・柿
- β-カロテン:ニンジン・ブロッコリー・カボチャ
硫黄化合物系
硫黄化合物系のフィトケミカルには強い刺激臭があり、抗酸化力の他にも殺菌力を持つため、食中毒を防ぐための薬味としても重宝します。硫黄化合物系に該当するフィトケミカルと主な食品は次の通りです。- 硫化アリル:ニンニク・ネギ・タマネギ
- スルフォラファン:ブロッコリースプラウト
- フェネチルイソチオシアネート:クレソン
- ベンジルイソチオシアネート:パパイヤ
フィトケミカル(ファイトケミカル)の抗酸化力を比較
フィトケミカルは植物に由来する化学物質であり、上記でご紹介した野菜類の他にも多くの植物性食品に含まれています。野菜などの食品には、どれくらいの抗酸化力が期待できるのでしょうか?
食品の抗酸化力を数値で表す指標の一つとして、ORAC値というものがあります。ORACはアメリカの国立老化研究所において開発された活性酸素吸収能力の測定法で、食品に含まれる抗酸化物質の抗酸化力を分析するために用いられる手法です。
この方法で算出されたORAC値は抗酸化物質の量を示すものではなく、食品の抗酸化力の強さをビタミンE様物質(Trolox)の量に換算して表します。ORAC値を表す時に使用される単位はμmole TE/g(マイクロモルTrolox当量/グラム)です。
それでは野菜にどのくらいの抗酸化力があるのか、ORAC値を確認してみましょう。主な野菜に含まれるおおよそのORAC値は次の通りです。
- ホウレンソウ 約28μmole TE
- アスパラガス 約18μmole TE
- ブロッコリー 約13μmole TE
- ニンジン 約12μmole TE
- タマネギ 約11μmole TE
- ダイコン 約10μmole TE
- 赤ピーマン 約9μmole TE
- カリフラワー 約7μmole TE
- ピーマン 約6μmole TE
- カボチャ 約5μmole TE
- トマト 約3μmole TE
※すべて1gあたり
この数値から、上記の野菜の中ではホウレンソウが高いORAC値を示していることが分かります。
フィトケミカル(ファイトケミカル)以外の抗酸化力が強い食べ物
野菜以外の食品に含まれるORAC値もチェックしてみましょう。代表的な果物のORAC値はおおよそ以下の通りです。- プラム・ブルーベリー 約64μmole TE
- ブラックベリー 約53μmole TE
- ラズベリー 約50μmole TE
- イチゴ 約37μmole TE
- サクランボ 約35μmole TE
- リンゴ 約28μmole TE
- モモ 約20μmole TE
- オレンジ 約19μmole TE
- バナナ 約9μmole TE
※すべて1gあたり
果物には野菜よりもORAC値が高いものが多く、プラムやブルーベリーはホウレンソウの2倍以上のORAC値を示しています。次に、ナッツ類のORAC値を見ていきましょう。
- ペカンの実 約180μmole TE
- クルミ 約140μmole TE
- ヘーゼルナッツ 約98μmole TE
- ピスタシオ 約80μmole TE
- アーモンド 約40μmole TE
- ピーナッツ 約30μmole TE
※すべて1gあたり
ナッツ類の中にはクルミやヘーゼルナッツなど、果物以上にORAC値の高いものがあります。香辛料はさらに高いORAC値を示しているので、その数値を確認してみましょう。
- クローブ 約3200μmole TE
- シナモン 約2700μmole TE
- ハナハッカ 約2000μmole TE
- ターメリック 約1600μmole TE
- バジル 約700μmole TE
※すべて1gあたり
これらの食品には、スーパーフードと呼ばれる品目も多く含まれています。
フィトケミカル(ファイトケミカル)の取り入れ方
フィトケミカルを食事に取り入れる場合はフィトケミカルを含む野菜などの食材を使って、いつもより副菜を1~2品プラスしてみましょう。手軽に用意できる副菜としては、サラダやスープがおすすめです。
料理の品数を増やすことが難しければ、いつも作っている料理に野菜などを1~2種類くらい追加するだけでもフィトケミカルを摂取できます。
フィトケミカル(ファイトケミカル)は主に植物性食品から取り入れられる!
フィトケミカルは種類が多種多様で、体にとって嬉しい抗酸化作用や殺菌作用などを持ち合わせています。特に植物由来の原材料から作られた食品に多く含まれているので、日々の食卓に取り入れてみることをおすすめします。
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