食物繊維の水溶性と不溶性の違いとは?食品に含まれる割合の一覧も

さまざまな食品に含まれる「食物繊維」は、私たちの体に良い影響を与えてくれる重要な栄養素です。最近ではダイエットや健康維持の観点からも高い注目を集めていますが、やみくもに量を摂取すれば良いわけではありません。

食物繊維を適切に摂取するには、食物繊維に関する正しい知識をもつことが何よりも重要です。そこで今回は、食物繊維の水溶性や不溶性の違いや働きなど、食物繊維の特徴について詳しく見ていきます。ぜひ参考にして健康ライフに活かしてください。

 

食物繊維とは

“食物繊維”

食物繊維は私たちの体内にある消化酵素では消化できない成分の総称です。食物繊維を摂取しても胃や小腸で消化や吸収が行われずに小腸を通過し、そのまま大腸まで届けられます。

「消化されない」と聞くとネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、食物繊維は消化されないからこそ、私たちの体にさまざまな嬉しい働きをもたらしてくれるのです。

具体的には下記のような作用が挙げられます。

  • お腹の調子を整える
  • 血中コレステロール濃度を下げる
  • 血糖値の上昇を抑える

食物繊維には水溶性と不溶性があり、それぞれで期待できる働きが異なります。そこでここからは食物繊維への理解を深めていくため、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

 

水溶性食物繊維とは

水に溶ける特性を持つ食物繊維を水溶性食物繊維と言います。主な働きは下記の通りです。

【血糖値の急上昇を防ぐ】

食後の糖の吸収を穏やかにする作用がある水溶性食物繊維は、摂取すると急激な血糖値上昇を抑えやすくなります。

【血中コレステロール値の抑制】

血中コレステロール値の上昇の原因となる胆汁酸は、便として体外に排出させることが重要です。水溶性食物繊維を摂取するとこの作用を促しやすくなるため、血中コレステロール値を安定させやすくなります。

また水溶性食物繊維を代表する主な成分として下記のものが挙げられます。

  • ペクチン
  • グルコマンナン
  • アルギン酸
  • アガロース
  • アガロペクチン
  • カラギーナン
  • ポリデキストロース

上記成分は下記のような食材に含まれているため、水溶性食物繊維を積極的に摂りたい方はぜひ参考にしてください。

  • 麦類(ライ麦や大麦など)
  • 海藻類(ワカメや昆布など)
  • 果物(ミカンやリンゴ、イチゴなど)
  • 根菜類(大根やにんじんなど)

 

不溶性食物繊維とは

不溶性食物繊維は、水に溶けない特性を持つ食物繊維を指します。不溶性食物繊維の主な働きは下記の通りです。

【便秘予防】

保水性が高い不溶性食物繊維は胃腸で水分を吸収して膨張します。すると大腸内で便のカサが増しますが、これが排便がスムーズになる理由です。

【腸内の環境を整える】

水溶性食物繊維と同様に不溶性食物繊維も大腸内で発酵・分解されると、善玉菌の増加につながると考えられています。これにより、腸内細菌の環境を整えるように働くのです。

【不要な物質を体外に排出させる】

不溶性食物繊維は体内にある不要な物質を吸い寄せて、便とともに体外に排出させる作用があります。

また不溶性食物繊維を代表する主な成分として、下記のものが挙げられます。 

  • セルロース
  • ヘミセルロース
  • キチン
  • キトサン

上記成分は下記のような食材に含まれているため、不溶性食物繊維を積極的に摂りたい方はぜひ参考にしてください。 

  • 穀類(ライ麦や玄米など)
  • 野菜(れんこんやごぼうなど)
  • 豆類(納豆や大豆など)
  • きのこ類(えのきやまいたけなど)
  • 乾物(干し椎茸や切干大根など)

 

【食品一覧】水溶性・不溶性食物繊維の含有量

“食物繊維の多いこんにゃく”

こちらでは、食物繊維を多く含む食品の食物繊維含有量を下記の表にまとめました。

 

食物繊維総量(g)

水溶性食物繊維量(g)

不溶性食物繊維量(g)

穀物(玄米)

1.4 0.2 1.2

いも及びでんぷん類(板こんにゃく/精粉)

2.2 0.1 2.1

豆類(挽きわり納豆)

5.9 2.0 3.9

豆類(おから)

11.5 0.4 11.1

野菜類(キャベツ)

1.8 0.4 1.4

野菜類(ごぼう)

5.7 2.3 3.4

野菜類(れんこん)

2.0 0.2 1.8

果物類(バナナ)

1.1 0.1 1.0

きのこ類(ぶなしめじ)

3.5 0.3 3.2

きのこ類(生しいたけ)

4.6 0.4 4.1

※すべて100gあたりの量
※出典:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

 

上記より100gあたりの量で比較した場合、特に食物繊維含有量が多い食品としておから、納豆、ごぼうが挙げられます。

納豆はそのまま食べることができる食品なので、日常の食生活に手軽に取り入れられるでしょう。特に和食で用いられやすいおからは、工夫次第でクッキーやハンバーグなどに活用できます。

自分なりのアレンジを楽しみながら、食物繊維を含む食品と上手に付き合っていきましょう。

 

食物繊維Q&A

“食物繊維の多いきのこ類”

ここからは食物繊維にまつわるよくある質問について、Q&A形式で回答していきます。

 

1日にどれくらい食物繊維を摂れば良いの?

2020年版の日本人の食事摂取基準(厚生労働省策定)によると、日本人が1日に目標とすべき食物繊維の摂取量は以下です。

  • 18~64歳(男性)…21g以上
  • 18~64歳(女性)…18g以上

1950年頃の日本人は一日20g以上の食物繊維を日常的に摂れていましたが、食文化の多様化が進んだ近年では、日本人の食物繊維摂取量は一日平均14g程度まで落ちているという報告があります。

上記で紹介した通り、食物繊維は私たちの体にさまざまな嬉しい働きをもたらしてくれる栄養素です。健康的な体を維持するためにも、より積極的に日々の食生活に摂り入れるようにしましょう。

 

水溶性と不溶性は両方摂った方が良いの?

結論からいうと、水溶性食物繊維と不溶性水溶性は両方を摂るよう意識するのがベターです。一口に食物繊維といっても、両者はそれぞれ性質や働きが異なります。水溶性食物繊維と不溶性水溶性をバランス良く摂ることで食物繊維本来の働きを実感しやすくなるでしょう。

 

ダイエットに食物繊維が良いといわれているのはなぜ?

ダイエットの観点から食物繊維が注目されている理由として、食物繊維の代表的な働きである「便の排泄」や「腸内環境の改善」が大きく関係しています。

食物繊維は過剰に摂ると内臓脂肪として蓄積される糖質や脂質の吸収を阻害して便として排出したり、腸内の善玉菌の餌となり腸内環境を整えて便を排出しやすくしたりします。体内に滞留している便の量は体重に直結するため、便の容量が多ければ多いほど体重は重くなるでしょう。

このような理由から、適切な量の食物繊維を日常的に摂ることで「食物繊維=ダイエットに良い」という考えが一般化しているのかもしれません。

ただし特定の病気が原因の便秘症状は、食物繊維摂取量を増やすことで逆に症状が悪化する場合があります。医師の診断のもと適切な治療を行いましょう。

 

効果的にダイエットできる水溶性と不溶性の割合は?

効果的にダイエットをするための水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の摂取量の割合は、各々の体質や健康状態によって異なります。

例えば日頃から不溶性食物繊維の不足が原因で便秘症に悩んでいる方の場合は、不溶性食物繊維を多く含む食品を意識的に摂る必要があります。また血糖値を抑えながらダイエットをしたい方の場合は、水溶性食物繊維の摂取比重を増やすと変化を実感しやすくなるかもしれません。

 

食物繊維を摂り過ぎるとどうなるの?

食物繊維は私たちの体にさまざまなメリットを与えてくれる重要な栄養素ではありますが、だからといって極端な摂取は控えた方が無難です。

食事摂取基準において、食物繊維の耐容上限量は定められていません。しかし人によっては食物繊維の過剰摂取により、下痢症状などの予期せぬトラブルに見舞われる可能性があります。食物繊維に限らず、食品に含まれる栄養素はバランス良く摂取することを心掛けましょう。

 

サプリメントから食物繊維を摂って良い?

日常の食事で食物繊維の理想量を摂取するのが難しい場合は、サプリメントに頼っても問題ありません。ただしサプリメントはあくまで日々の食事を補うことを目的として作られた製品であり、本来であれば必要な栄養素は食事から摂取するのが望ましいといえます。

これを念頭においておかないとサプリメントの過剰摂取による副作用に悩まされる可能性もあるので、十分に注意しましょう。

 

食物繊維は水溶性も不溶性も両方摂ろう!

“食物繊維の多いきのこ類”

腸内環境を整えたり血糖値の急上昇を抑えたりと、食物繊維は私たちが健康を維持する上でとても重要な役割を担う栄養素です。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維はそれぞれ働きが異なるため、両方をバランス良く摂るよう心掛けましょう。




参考文献

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https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html

食物繊維の必要性と健康 e-ヘルスネット 厚生労働省 参照年月日:2024年6月25日
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html

腸内細菌と健康 厚生労働省 参照年月日:2024年6月25日
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html

溶ける食物繊維、溶けない食物繊維 「毎月19日は食育の日」 荒尾市 参照年月日:2024年6月25日
https://www.city.arao.lg.jp/kenko/shokuiku/shokuiku-day/page20645.html

栄養科だより 医療法人春秋会 城山病院 参照年月日:2024年6月25日 
https://www.shiroyama-hsp.or.jp/content/files/eiyou/kenkokyositu_vol12.pdf

便秘で困っています(食に関する困り事・関心事) 石川県 参照年月日:2024年6月26日 https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kosodate/syokuiku/2022/syokumessage_benpi.html

日本人の食事摂取基準(2020 年版) 厚生労働省 参照年月日:2024年6月26日 
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

栄養に関する基礎知識 国立研究開発法人国立循環器病研究センター 参照年月日:2024年6月26日
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/diet01/

サプリメントについて知っておくべきこと 厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 厚生労働省 参照年月日:2024年6月26日 https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c01/02.html