プラントベースフードで亜鉛を適切に摂取するには?具体的な方法を紹介

亜鉛は、生体反応に関わる重要な栄養素の1つです。亜鉛を多く含む食品は動物性食品が中心ですが、プラントベースフードの中にも亜鉛を含むものが複数あります。プラントベースの食生活においては、摂取基準を考慮して意識的に亜鉛を摂取することが大切です。

この記事では、プラントベースフードで亜鉛を適切に摂取する方法について解説します。亜鉛を含むプラントベースフードの種類も紹介するので、ぜひ参考にしてください。


亜鉛の概要

そもそも亜鉛は、どのような栄養素なのでしょうか?ここでは、亜鉛の概要に触れた上で、役割やはたらきについて解説します。

 

亜鉛とは

亜鉛とは、ヒトの体にとって必要な微量ミネラルです。体内で亜鉛が果たす役割は多岐にわたるため、適切な摂取量を維持する必要があります。亜鉛は体内には約2g存在しますが、体内では作れません。そのため、亜鉛を含む食品を継続的に食べて摂取することが重要です。

亜鉛は、筋肉、骨、皮膚、肝臓、脳、腎臓、毛髪、消化管、膵臓など、体中のさまざまな組織に存在しています。ただし、成人では、体内の亜鉛のほとんどは筋肉と骨に集中しています。

 

亜鉛の役割やはたらき

亜鉛は、さまざまな生体内反応のために必要な栄養素です。たとえば、酵素の構成や酵素反応の活性化などに関わっています。ホルモンの合成や分泌の調整にも、亜鉛が必要です。また、亜鉛は、DNAやタンパク質を合成する過程にも関与しています。免疫反応の調節や味覚に関わる細胞の生成などにおいても重要な役割を果たしています。

亜鉛にはこのようにさまざまな役割や働きがあり、不足すると体内でトラブルが生じる原因になります。ただし、過剰摂取も問題になるため、摂取量には注意が必要です。

 

亜鉛の摂取基準

1日あたりの亜鉛の摂取基準として推奨されている量は、18~74歳の男性では11mg、女性では8mgです。亜鉛の吸収率は約30%であり、日本人の成人は亜鉛が不足しがちな人が多いと言われています。そのため、亜鉛は積極的に摂取する必要があります。

ただし、亜鉛を過剰摂取すれば弊害もあるため、注意が必要です。亜鉛の摂取基準においては上限の目安も定められています。男性については、18~29歳で40mg、30~64歳で45mg、65歳以上で40mgが上限です。一方、女性は、18~74歳で35mg、75歳以上で30mgが上限となっています。

また、妊婦や授乳婦の場合、通常時よりも多くの亜鉛が必要です。1日あたりの亜鉛の摂取基準は、妊婦は10mg、授乳婦は12mgとされています。

 

亜鉛が不足した場合・過剰摂取した場合はどうなるか?

亜鉛が不足した場合や過剰摂取した場合は、体にさまざまな問題が生じる恐れがあります。ここでは、亜鉛が不足した場合と過剰摂取した場合について、それぞれどのような症状が出るか解説します。

 

亜鉛が不足した場合

体内で亜鉛が不足すれば、貧血、味覚障害、皮膚炎、免疫機能低下といった問題が引き起こされる可能性があります。症状がひどくなると食事から亜鉛を摂取するだけでは状態を改善できず、治療が必要になる場合もあります。

亜鉛は、便、汗、精液、月経血などによって排出される仕組みになっているため、毎日の食事でしっかり摂取することが大切です。激しいスポーツで日常的にたくさん汗をかくなど、亜鉛が排出されやすい状況の方は、特に注意する必要があります。また、アルコールを摂取した場合も、亜鉛の排出量は多くなります。亜鉛がより不足しやすい状況になっている方は、亜鉛を特に積極的に摂取しましょう。

 

亜鉛を過剰摂取した場合

亜鉛を摂取してもすべてがそのまま吸収されるわけではないため、通常の食事をとっているだけで亜鉛の過剰摂取になるケースはあまりありません。ただし、亜鉛のサプリメントを必要以上に摂取した場合、過剰摂取になる可能性があります。

亜鉛を過剰に摂取した際に現れる症状は、発熱、悪心、嘔吐、胃痛、下痢などです。また、鉄や銅などの吸収を阻害し、貧血や銅欠乏などを招くリスクがあります。さらに、HDLコレステロールを低下させる原因にもなります。HDLコレステロールは不要なコレステロールを取り除いて動脈硬化を抑える働きがあるため、基準値以上を保つべきです。

亜鉛不足を補う目的でサプリメントを摂取する際は、過剰摂取にならないよう注意しましょう。

 

プラントベースフードで亜鉛を摂取する際に押さえておきたいこと

亜鉛は、主に動物性食品に多く含まれています。たとえば、牡蠣、赤身の肉、鶏肉、カニをはじめとする魚介類などに豊富です。

ただし、植物性食品の中にも亜鉛を含む食品は存在します。プラントベースフードで亜鉛を摂取したい場合は、それらをうまく組み合わせて取り入れることが大切です。食べ方を工夫すると、プラントベースフードで亜鉛をより摂取しやすくなります。

以下では、プラントベースで亜鉛を適切に摂取する方法や亜鉛を含んでいるプラントベースフードについて、以下で紹介します。

 

プラントベースで亜鉛を適切に摂取する方法

プラントベースで亜鉛をうまく取り入れるには、どうすれば良いのでしょうか?ここでは、プラントベースで亜鉛を適切に摂取する方法を解説します。

 

複数の食材を組み合わせる

プラントベースフードの中にも亜鉛を含む食品が複数ありますが、魚介類や肉類の動物性食品と比べれば含有量は少なめです。そのため、1つの食材だけで亜鉛の摂取基準を満たそうとせず、さまざまな食材を組み合わせて必要な量の摂取を目指しましょう。亜鉛を含む複数の食材を選び、他の栄養素も含めてバランスよく摂取することが大切です。

 

亜鉛の吸収を助ける成分と一緒に摂取する

亜鉛を効率的に摂取するには、吸収を助ける成分とともに亜鉛を摂取することもポイントです。亜鉛の吸収率を高めるとされる成分としては、クエン酸やビタミンCなどがあげられます。

なお、亜鉛の吸収を妨げる成分もあるため、亜鉛を含む食品とは一緒に摂取しないよう注意しましょう。亜鉛の吸収を妨げる成分としては、植物性食品に含まれる食物繊維、加工食品に多く含まれるポリリン酸、フィチン酸などがあげられます。

 

容量を守ってサプリメントを活用する

一般的に日本人は亜鉛が不足しがちであり、亜鉛の不足を防ぐにはサプリメントの活用も1つの方法です。特にプラントベースフードを中心にした食生活では、亜鉛を多く含む動物性食品を摂取しないため、サプリメントの活用も積極的に検討すると良いでしょう。

ただし、サプリメントを飲む際は、必ず容量を守る必要があります。サプリメントを必要以上に摂取すれば亜鉛の過剰摂取になり、体にさまざまな問題を引き起こす原因となります。

 

亜鉛を含んでいるプラントベースフード

プラントベースフードの中にも、亜鉛を含んでいるものは複数あります。ここでは、亜鉛を含んでいるプラントベースフードについて具体的に解説します。

 

野菜・果物

野菜や果物には、亜鉛を含んでいるものがあります。具体的には、しいたけ、ごぼう、しそ、たけのこ、ブロッコリーなどです。

また、栗、ラズベリー、バナナなどにも亜鉛が含まれています。果物の場合、生よりもドライフルーツを選んだほうが亜鉛を多く摂取できます。たとえば、生のバナナよりも乾燥バナナのほうが亜鉛が豊富です。

 

豆類

豆類も亜鉛を含むプラントベースフードの1つです。たとえば、凍り豆腐、大豆、納豆、きなこ、えだまめなどに亜鉛が含まれています。

特に、凍り豆腐や大豆は、調理の際に気軽に加えやすい食材です。いつものレシピに加えるだけで亜鉛を含むおかずが完成します。また、納豆を食事の1品として加えるのもおすすめです。

 

穀類

主食となる穀類にも、亜鉛が含まれています。具体的には、ご飯、焼き麩、オートミール、とうもろこしなどが該当します。

より効率的に亜鉛を摂取するには、全粒粉を選ぶのがおすすめです。全粒粉とは、小麦やライ麦などを加工する際に胚芽や表皮などを取り除かず、丸ごと粉にしたものです。

 

亜鉛を多く含むプラントベースフードを選ぼう

亜鉛は体にとって重要な栄養素ですが、日本人は不足しがちな人も多いと言われています。亜鉛が豊富な食品は動物性食品が中心となっているものの、植物性食品の中にも亜鉛を含むものがあります。プラントベースの食生活を送る上では、亜鉛を含む植物性食品を複数組み合わせて摂取しましょう。

なお、亜鉛は過剰摂取にも気をつける必要があるため、サプリメントを利用する際は容量をよく確認することが重要です。



参考文献

6.2.2.亜鉛(Zn) 厚生労働省 参照年月日:2023年12月12日 s0529-4ai.pdf (mhlw.go.jp)
  
『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』医療関係者の方へ ホーム  > 海外の情報  >  亜鉛 厚生労働省 参照年月日:2023年12月12日 厚生労働省eJIM | 亜鉛[サプリメント・ビタミン・ミネラル - 一般] (ncgg.go.jp)
 
HDLコレステロール e-ヘルスネット 厚生労働省 参照年月日:2023年12月12日 HDLコレステロール | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
 
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 文部科学省