海外の〇〇フリー事情を一挙解説!広がりを見せるフリーフロム食品

海外では、さまざまな分野において「○○フリー」が浸透しています。なかでも今、健康的な食生活を実践するために注目されているのが、フリーフロム食品。日本ではあまり聞き慣れない言葉ですが、商品化され店頭に並んでいるフリーフロム食品も販売されています。

今回はフリーフロム食品について、認知が高まっている背景や具体例について紹介します。記事の最後では、フリーフロム食品を手軽に食べることができる情報も紹介しますので、気になっている人はぜひチェックしてくださいね。

 

海外で浸透するフリーフロム食品

卵や乳製品、パン

「フリーフロム(Free From)食品」とは、特定の原材料や成分が入っていない食品を指します。

フリーフロム食品は本来、アレルギーのある人や特定成分への耐性が弱い人のために作られた加工食品でした。しかし近年では健康志向の高まりから、健康維持や疾病予防のために食べる人が増えています。

現在では欧米を中心に人気を集めており、フリーフロム食品市場は急速に成長しています。

 

フリーフロムの意味とは

フリーフロムとは「特定成分が含まれていない」という意味です。しかし店頭では、「フリー(Free)」や「ノー(No)」、「ノン(Non)」と表記し販売されていることが多いようです。

例えば、「グルテンフリー」は、麦類に含まれるたんぱく質の一種であるグルテンが含まれていない食品で、「ノンGMO」は、GMO(遺伝子組み換え食品の略称)が含まれていない食品を指します。

フリーフロム食品は、既に欧米では大きなトレンドとなっており、英国ではフリーフロム・フード・アワード(Free From Food Award)という式典が開催されているほどです。

 

フリーフロム食品が広がっている背景

フリーフロム食品は元々、アレルギーなど食に制約がある人のために作られた食品でした。しかし、オーガニック食品やスーパーフードなどの健康食ブームの到来に伴いフリーフロム食品の需要も拡大し、気軽に食生活に取り入れる人が増えてきました。

特に米国では近年、食に対する意識が大きく変わってきており、製造過程や添加物などを気にする人が増えています。健康な食へのこだわりが強くなっていることも、フリーフロム食品が支持されている理由の一つでしょう。

また、英国の大手スーパーでは、フリーフロム食品のプライベートブランドを展開しており、英国の消費者の3分の1はフリーフロム食品を購入している、というデータもあります。

 

     

    フリーフロム食品の具体例

    アレルゲンとなる食品のイメージ

    日本ではあまり聞き慣れないフリーフロム食品ですが、海外ではさまざまなフリーフロム食品が開発されています。今や欧米では、健康食カテゴリの中ではメジャーであるフリーフロム食品。ここでは◯◯フリーの具体例を詳しく紹介します。

     

    1.ミートフリー

    一般的にミートフリーとは、肉不使用の食品のことを指します。ベジタリアンやヴィーガンなどさまざまな食習慣の広がりを背景に認知が高まり、日常的に食べる人が増えてきました。

    また、ミートフリーは環境保護の観点からも支持されています。食肉用の家畜を育てるために必要な土地開発や飼料の原料となる穀物の栽培、水などの調達が、環境破壊につながっていると考えられているからです。

    このような背景から、元ビートルズのポール・マッカートニー氏が地球環境保護を目的に提唱した、週に一日だけ菜食を実践する「ミートフリーマンデー」の活動も広がっています。日本でも大豆を使った代替肉などが販売されています。

     

    2.エッグフリー

    エッグフリーとは卵を使用していないことを意味します。植物由来で作られた卵は、味も食感も鶏卵とほとんど変わらないので、卵アレルギーの人でもオムレツやスクランブルエッグなどの卵味の料理を美味しく食べることができます。

    また、植物性素材で作られたヴィーガンエッグは卵不使用に加え、鶏卵よりもカロリーが低いことやコレステロールゼロ、豊富な食物繊維など体に嬉しいメリットもあります。ヴィーガンやベジタリアンの方によく食べられています。

     

    3.デイリーフリー

    デイリーフリーとは、乳製品不使用のことで、牛乳やヨーグルト、チーズ などの乳製品を使用しない食品を指します。

    なお、乳製品に含まれる成分は以下の2つがあり、それぞれフリーフロム食品として販売されています。

     

    カゼインフリー

    カゼインとは、乳製品に含まれるタンパク質です。カゼインから生じるカソモルフィンという成分が、言語や聴覚を司る側頭葉に影響を与える可能性があると指摘されており、発達障害の治療ではカゼインフリー食品を使った食事が提供されています。

    海外では、大豆ヨーグルトやココナッツミルクから作ったチーズ、牛乳代替品のアーモンドミルクやライスミルクなどが人気です。

     

    ラクトースフリー

    ラクトースとは乳製品に含まれる糖分のことで、日本語では乳糖といいます。ラクトースフリー食品は、ラクトースを分解できず下痢や腹痛などの症状を引き起こす乳糖不耐症の人でも、安心して摂取することができる乳製品の代替品です。

    欧米では、ラクトースフリー食品が幅広く商品展開されており、手軽に楽しむことができます。

     

    4.グルテンフリー

     

    グルテンフリーは、小麦や大麦、ライ麦などに含まれるグルテンというタンパク質を使っていない食品のことです。

    グルテンとは、小麦粉に水を加えて捏ねることでできる成分。さまざまなアレルギー反応を引き起こすといわれており、欧米ではグルテンフリーの食品が広く一般化しています。具体的には、パンやパスタなどの主食をはじめ、ビールやチップスなど、幅広く商品化されています。

    また日本では近年、米粉によるグルテンフリー市場の取り組みが広がっています。

     

    5.ソイフリー

    ソイフリーは、大豆不使用の食品です。大豆はベジタリアンやヴィーガンの方にとって貴重なタンパク源ですが、欧米では遺伝子組み換え食品を避ける動きから、ソイフリーが広がっています。

    大豆の生産や栄養成分がさまざまな弊害を引き起こすといったネガティブなデータもあるようですが、根拠は諸説あり一概に「大豆は害」とはいえません。

     

    6.シュガーフリー

    シュガーフリーは、砂糖を使わずに作った食品です。欧米では以前から、白砂糖の代わりにシュガーフリーの甘味料が使われていました。

    砂糖の過剰摂取は肥満や糖尿病などを引き起こすといわれ、日本でもシュガーフリー食品の需要は拡大しています。砂糖不使用とはいえ甘さをしっかり感じられるシュガーフリーには、ジャムやチョコレートなど身近な食品が多数販売されています。

     

    7.トランスファットフリー

    トランスファットフリーとは、油脂を精製、加工する際にできるトランス脂肪酸を使っていない食品です。トランス脂肪酸は、摂りすぎると動脈硬化などを引き起こすと言われており、WHOでは摂取エネルギーの1%未満にする目標が示されています。

    日本で販売されているマーガリンの多くは、トランス脂肪酸の量が1%未満となっていますが、中にはまだまだトランス脂肪酸の量が多い商品もあります。

     

    8.GMOフリー

    GMOとは、遺伝子組み換えを表す英語「Genetically modified organism」の頭文字をとった略称で、遺伝子組み換え作物不使用の食品をGMOフリーと言います。

    遺伝子組み換えとは、作物の中から有用な遺伝子を取り出し、別の作物の遺伝子に組み込むことで、新たな特性をもたらすことです。

    病害虫に強い作物ができることから、作物の増産や労働力の削減といったメリットがありますが、一方で安全性の未確立や環境汚染といった問題も指摘されています。

    トルコなど、遺伝子組み換え食品に対して厳しい規制がなされている国もあり、イタリアのワイン農家によって始まったGMOフリーゾーン運動は、日本でも活動が見られるようになりました。

     

     

    より広い範囲を表す「〇〇フリー」

     

    ここまでは、主に食品に関する「〇〇フリー」を紹介しました。ここからは、それよりも広い範囲を表す概念の3つの「〇〇フリー」について解説します。

     

    アニマルフリー

    一般的にアニマルフリーとは、動物由来の原材料を使用していない製品のことで、ファッションの分野でもよく使われる言葉です。

    羽毛や毛皮など、特定のファッションアイテムには動物の体の一部が使われており、そのために多くの動物たちの命が犠牲になっています。さらに、製造においても大量の水や化学薬品を使うことから、環境問題の深刻化も懸念されています。

    このような背景から近年では、製品の製造、販売、再利用に至るまでに道徳的配慮を行う、エシカル消費の重要性が高まっています。

     

    アレルギーフリー

    アレルギーフリーは、一般的にアレルギーを引き起こす特定の原材料を使っていないという意味で使われます。身近な例としては、「本品には小麦・卵・乳成分は含まれていません」といった表示がされた食品のパッケージなどがあります。

    アレルギーフリーの基準は国によって異なっており、日本におけるアレルゲン表示の対象品目は「特定原材料」の7品目と「特定原材料に準ずるもの」の21品目、合わせて合計28品目があります。

    • 特定原材料…小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)、えび、かに
    • 特定原材料に準ずるもの…アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

     

    ギルトフリー

    ギルトフリーとは、「罪悪感がない」「罪悪感からの開放」という意味を持つ食品に使われる言葉です。一般的には、低カロリー・低糖質のスイーツや無添加の加工食品など体に優しい食品を指します。

    さらに、フェアトレード製品など環境保護や人権問題の観点からも、罪悪感なく安心して食べられる食品もギルトフリーに含まれるようです。

    2010年代にオーストラリアで生まれたギルトフリーは、日本でも2016年頃に注目され始め、今では美容・健康の観点から人気を集めています。

     

    広がりを見せるフリーフロムな食品を要チェック

     

    特定の食材や成分が入っていないフリーフロム食品は、本来アレルギーなど健康上の理由から食に制限のある人を支えるものとして作られました。しかし近年では健康志向の高まりから、さまざまな人に支持をされ、意識的に摂り入れられています。

    フリーフロム食品は欧米において既に広く一般化しており、アレルゲンとしてよく知られている卵や乳製品、グルテンなどをはじめ、遺伝子組み換え食品や添加物など幅広いフリーフロム食品が存在しています。

    日本でも大手食品企業が開発を始めるなど認知度は高まりつつあるので、今後ますますフリーフロム市場は活性化することが期待されます。