全粒粉とは?小麦粉やライ麦粉との違い、含有するカロリー・栄養素など解説
健康志向の高まりとともに、パンやパスタなどで「全粒粉」と言う言葉を目にする機会が増えました。体に良さそうなイメージはあっても「普通の小麦粉と何が違うの?」「なぜ茶色いの?」と言った疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では全粒粉の基本的な知識から小麦粉やライ麦粉との違い、そして気になるカロリーや栄養素までを比較しながら詳しく解説します。
全粒粉とは

全粒粉は「ぜんりゅうふん」と読むのが一般的で、小麦粉の一種です。その名の通り、小麦の粒を丸ごと挽いて作られる粉で、英語では「whole wheat flour」などと呼ばれます。
通常の白い小麦粉とは異なり、小麦の表皮や胚芽まで含まれるため色は茶褐色、独特の香ばしい風味と歯ごたえのある食感が特徴です。お米で例えると、精白米に対する「玄米」に当たります。
全粒粉と小麦粉の違い
小麦の粒は「表皮(ブラン)」「胚芽」「胚乳」の3つの部分から構成されています。
全粒粉は3つすべての部位が使われますが、小麦粉は小麦の粒の真ん中にある「胚乳」だけを取り出して作られています。小麦粉は白くてきめ細かい点が特徴で、パンやお菓子作りによく使われています。
全粒粉と小麦ふすま粉の違い
全粒粉と似たものに「小麦ふすま粉」があります。「ふすま」とは小麦の表皮部分のことで「ブラン」とも呼ばれます。
全粒粉が小麦の粒全体(表皮・胚芽・胚乳)を含んでいるのに対し、小麦ふすま粉は製粉の過程で取り除かれた表皮(ふすま)のみを粉にしたものです。食物繊維が特に多く含まれる部分で、健康食品の素材としてよく利用されています。
全粒粉とライ麦粉の違い
健康志向として注目されている食材の中には、ライ麦粉もあります。粒状やパンを作った時の見た目は似ていますが、根本的に原料が異なり、全粒粉は「小麦」、ライ麦粉は「ライ麦」から作られます。
どちらもイネ科の植物ですが、小麦よりもライ麦の方がグルテン含有量が少ないため、ライ麦から作られるパンは独特の酸味とどっしりとした食感が特徴です。
全粒粉と類似した粉のカロリーや栄養素を比較

全粒粉、一般的な小麦粉、そしてライ麦粉には、栄養面でどのような違いがあるのでしょうか。ここではそれぞれの主な栄養素を比較し、その特徴を解説します。
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小麦粉/薄力粉/1等 |
強力粉/全粒粉 |
ライ麦粉 |
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エネルギー(kcal) |
349 | 320 | 324 |
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たんぱく質(g) |
8.3 | 12.8 | 8.5 |
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炭水化物(g) |
75.8 | 68.2 | 75.8 |
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食物繊維(g) |
2.5 | 11.2 | 12.9 |
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ビタミンB1(mg) |
0.11 | 0.34 | 0.15 |
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カリウム(mg) |
110 | 330 | 140 |
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鉄(mg) |
0.5 | 3.1 | 1.5 |
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マグネシウム(mg) |
12 | 140 | 30 |
※すべて100gあたりの量
※出典:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
エネルギーに大きな差はありませんが、ビタミンやミネラル、特に食物繊維の含有量に違いがあることが分かります。胚乳のみから作られる小麦粉の食物繊維が100gあたり2.5gなのに対し、全粒粉はその約4倍の11.2g、ライ麦粉は約5倍の12.9gです。
全粒粉の栄養価は高く、ビタミンB1やカリウム、鉄は小麦粉に比べ3倍以上、マグネシウムは約12倍です。全粒粉が健康志向の食材として注目されている理由が分かります。
全粒粉に多く含まれる栄養素とその働き

全粒粉は日々の食事に手軽に取り入れられるのが魅力です。ここでは全粒粉に特に多く含まれる栄養素とその働きについて解説します。
便通を促進する食物繊維
全粒粉100gあたりには11.2gの食物繊維が含まれています。これは精白された小麦粉よりもはるかに多い量です。
食物繊維は、便の量を増やして便通を促進する働きや腸内環境を整える働きが知られています。さらに、食後の血糖値上昇を緩やかにしたり血液中のコレステロール濃度を低下させたりするなど、多くの生理機能がある栄養素です。
食物繊維についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
食物繊維の水溶性と不溶性の違いとは?食品に含まれる割合の一覧も
代謝を促進するビタミンB1
ビタミンB1は糖質をエネルギーに変える「グルコース代謝」やエネルギー生産の要となる「クエン酸回路」、筋肉のエネルギー源となる「分岐鎖アミノ酸の代謝」などに欠かせない栄養素です。
全粒粉100gには0.34mgのビタミンB1が含まれ、ライ麦粉(0.15mg)の2倍以上。ライ麦粉よりも全粒粉は、効率的にビタミンB1を摂取できる食材と言えます。
ビタミンについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
ビタミンの多い食べ物の種類別ランキング!摂取するコツや働きもご紹介
塩分を排泄するカリウム
カリウムは体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する作用があるため、塩分の摂り過ぎを調節する上で重要なミネラルです。また細胞内液の浸透圧を一定に保つ働きや、体液のpHバランスを整える役割も担っています。
全粒粉100gあたりには330mgのカリウムが含まれており、これはカリウムが多い果物として知られるバナナ(100gあたり360mg)に匹敵する量です。
ミネラルについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
ミネラルの多い食べ物の項目別ランキング!摂取するコツや働きもご紹介
血をつくるもととなる鉄
鉄は赤血球のヘモグロビンを構成する主成分であり、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担う「血をつくるもと」となるミネラルです。全粒粉100gあたりには3.1mgの鉄が含まれており、これはライ麦粉(1.5mg)の約2倍、小麦粉(0.5mg)の約6倍にもなります。
鉄分の詳細や効率よく鉄を摂取する方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
300種類以上の酵素系のサポートに関わるマグネシウム
マグネシウムは、300種類以上の酵素の働きを助ける補酵素として体内で機能し、たんぱく質の合成、筋肉や神経のサポート、血糖値や血圧の調節など多様な生化学反応を制御しています。また骨造りやDNAやRNAの合成にも必要なミネラルです。
全粒粉100gあたりには140mgのマグネシウムが含まれています。これはライ麦粉(30mg)や精白された小麦粉(12mg)と比べて非常に高い量です。
全粒粉のここがすごい!

全粒粉を摂取するとどのようなメリットがあるでしょうか。ここでは全粒粉のすごいポイントを詳しく解説します。
野菜などにも負けない!食物繊維の多さ
全粒粉の食物繊維含有量は含有量の多さが知られる野菜類と比較しても劣りません。
【100gあたりの食物繊維含有量】
・強力粉/全粒粉 11.2g
・さつまいも/塊根/皮なし 2.2g
・キャベツ/結球葉 1.8g
・ごぼう/根 5.7g
・にんじん/根/皮つき 2.8g
・レタス/土耕栽培/結球葉 1.1g
・れんこん/根茎 2.0g
・生しいたけ/菌床栽培 4.6g
※出典:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
※野菜は全て生
全粒粉の食物繊維含有量はごぼうの約2倍、さつまいもの約5倍です。全粒粉パンを食事に取り入れると効率的に食物繊維の補給ができるでしょう。
GI値を抑えられる
GI値(グリセミック・インデックス)とは、食後の血糖値の上がりやすさを数値化した指標です。GI値が高い食品ほど血糖値が急激に上昇しやすくインスリン分泌を増やすため、GI値が低い食品を摂取して体への糖の吸収を穏やかにすると、インスリン分泌量を抑えられると考えられています。
精白粉で作った食パンのGI値は70-79、フランスパンは80-89であるのに対し、全粒粉パンは60-69で血糖値の上昇が緩やかです。
GI値が55以下の食品は「低GI食品」と呼ばれます。低GI食品について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
全粒粉はグルテンフリーなのか

健康的なイメージから「全粒粉はグルテンフリー」と誤解されることがありますが、全粒粉はグルテンフリーではありません。全粒粉は小麦の粒をまるごと挽いて粉にしているため、小麦由来のたんぱく質であるグルテンを含んでいます。
グルテンは小麦に含まれるグリアジンとグルテニンというたんぱく質が水と混ざることで生成され、パンのもちもちとした食感を生み出します。
グルテンフリーダイエット(減量ではなく食事の意味)とは、もともとセリアック病患者のための食事療法で、グルテンを全く摂取しないもしくはほとんど摂取しない食生活や食事法のことです。
グルテンの摂取は、体質によってアレルギーや不調の原因となることもあります。全粒粉は小麦を原料としているため、小麦アレルギーの方やグルテンを避けたい方は注意が必要です。
詳しくは以下の記事もご覧ください。
全粒粉の食品を取り入れて、栄養バランスを整えよう!

全粒粉は野菜に負けないほど多くの食物繊維や、ビタミン・ミネラルを含んでいます。いつも食べている小麦粉由来のパンを全粒粉パンに置き換えるなど簡単に食生活に取り入れられるので、まずは1回やってみようと始めてみてはいかがでしょうか?
BEYOND FREEでは、ライ麦と全粒粉を配合した「ライ麦パン / 全粒粉入り(2個入)」を提供しています。小麦の表皮や胚芽をまるごと粉砕した全粒粉を使用しており、粒々とした食感と香ばしさが魅力です。手軽に全粒粉の栄養を摂りたい方は、ぜひお試しください。
【参考文献】
健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~ 厚生労働省 参照年月日:2025年9月28日 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 厚生労働省 参照年月日:2025年10月2日 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
関根里恵 糖尿病における栄養食事療法 参照年月日:2025年10月2日 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/59/4/59_358/_pdf/-char/ja
公式HP 農林水産省 参照年月日:2025年10月2日 https://www.maff.go.jp/index.html